政府、AIのリスク対策で法規制を検討 国の戦略として利用促進と両立目指す
政府が人工知能(AI)の法規制に向け本格的に動き出した。政策の司令塔となるAI戦略会議は4月に「人間中心」など10原則を柱にしたAI事業者向け指針を策定し、5月には法規制を検討する方針を決めた。6月3日、岸田文雄首相が議長を務める「総合科学技術・イノベーション会議」を開催。安全性を確保した上で社会での活用を加速させることなどを盛り込んだ「統合イノベーション戦略2024」を策定し、翌4日に閣議決定した。
こうした政府の方針は、AIが急速に進歩して社会のさまざまな場面に普及する一方、生成AIによる偽情報の拡散や犯罪への悪用例が増加し、社会が悪影響を受けるリスクが高まっていることに関する対策が急務になったためだ。いち早く厳格な法規制を課すことを決めた欧州連合(EU)など、世界の潮流に歩調を合わせる狙いもある。
統合イノベーション戦略はまた、量子技術やロボット開発分野でAIを活用し、分野を超えて「重要技術の統合的戦略」や「技術の融合」を推し進めることを盛り込み、AIを中心とした技術開発で先行する欧米に追いつくことを目指している。
制度研究会で今夏に議論開始
統合イノベーション戦略2024は「3つの強化方策」で「AI分野の競争力強化と安全・安心の確保」を打ち出した。この中で「生成AIはインターネットにも匹敵する技術革新とされ、社会経済システムに大きな変革をもたらす一方、偽・誤情報の流布や犯罪の巧妙化などさまざまなリスクも指摘され、安全・安心の確保が求められる」と指摘した。 そして「イノベーション推進のためにもガードレールとなるAI利用の安全・安心を確保するためのルールが必要。国際的な動向なども踏まえ、(規制)制度の在り方を検討する」と明示し、今夏にAI戦略会議の下で新たに開催する「AI制度研究会(仮称)」で具体的な検討を始める、とした。
また、生成AIによる偽・誤情報対策としてAIが作ったコンテンツを判別する技術を開発し、AIコンテンツ分野でのリテラシー向上や交流サイト(SNS)上の成り済まし型偽広告の対策にも取り組む。