【能登半島地震から1年】能登・七尾市のシェフ平田明珠さん「これからもこの地とともに生きていきたい」復興を振り返り
能登の美しさを一皿一皿に詰め込んで
取材日にいただいたコースで最初に登場したのは、水汲み場で摘んできた野草のブーケだ。クレソン、ハコベ、山ニンジン、カキドオシ、セリ、三ツ葉、チドメグサ、カタバミ、山椒、アサツキ、仏の座、ナズナなど約14種類の野草がブーケになっている。野草の間には、サザエの肝や、きのこの味噌漬け(白じこの味噌漬け)、フロマージュ・ブランなどで作ったソースをしのばせていて、ひと口食べれば海と山の香りが心地よい音楽のように口の中に広がる。 「野草って一種類ではおいしくないんだけれど、合わせて食べると森の香りがしませんか? そこに海の食材をちょっと合わせて能登の海と山をつなぐ料理が作れたら、と思って考えたメニューなんです」 口の中で消えない力強い野草の味わいと、それを支えるような海の香りを感じながら目の前の海を眺める。すると「NOTO NO KOÉ」のイベントに寄せられていた「エスキス」リオネルさんの言葉が自然と頭に浮かんだ。
「高潔で美しく、野性的で豊かな土地、能登。 海は滋養に富み、風は潮の香りを運ぶ。 能登の光はどこまでも透明で、時間はゆったりと流れ、 木々は互いに語り合う。 能登の自然には神秘の力が宿る。 それは古くから伝わる普遍的な言語でもあり、 限られた人しか聞き取れない言葉でもある。 能登の人々は、人類の未来に対する答えを秘めながらそこに暮らしている。 だから能登は何度でも生まれ変わる」 能登に魅かれ、能登を愛し、能登とともに暮らす料理人の作る料理は能登の美しさそのものが溢れている。 そんな一皿に出合うために、能登を訪ねてほしい。 【ヴィラ・デラ・パーチェ】 石川県七尾市中島町塩津乙は部26-1 営業時間/11時30分~、17時30分~ 不定休 昼夜コース各18,000円(ともにサ込) 宿泊施設あり。 一泊2食付き2名1室の1名料金42,000円~ IN16時 OUT10時 全1室 ※宿泊は2食付きの場合のみ予約可。 取材・文=山路美佐 撮影=湯浅 啓 編集=内田理惠(婦人画報編集部)