英国総選挙に立候補したAIスティーブとは何者?政治の世界に入り始めたAIと、問われる政治家の存在意義
■ AIで問われる人間の政治家の存在意義 その答えは、人間の政治家がどこまで存在意義を発揮できるかで変わるだろう。 政治家の果たす役割が、単に国民や住民の意思を集約することだったり、過去の経緯に基づいて判断を下すことであったりするならば、それこそAIの方が適任だろう。AIは疲れを知らずに人々からの意見を集め、分析し、その最大公約数を出してくれる。 あるいは、これまで蓄積された膨大な過去データからパターンを把握し、そのパターンに沿って未来を予測してくれる。その能力は人間をはるかに上回る。 しかし政治家は、何らかの倫理的な判断、あるいは価値観の提示を行い、社会を導くという責任も負っている。さまざまな差別の撤廃運動や不条理な社会制度の改革運動などは、そうした判断に基づいて、これまでとは違う社会を築く行為だ。 それは現在や過去のデータに基づいた判断しかできないAIにとって苦手とする領域であり、これからも人間の政治家に期待されるものだろう。 逆に言えば、「政治なんてAIに任せておけば十分」と感じるようになったとき、私たちは民主主義の危険領域にいるのかもしれない。政治における生成AIの活用を、期待と不安をもって注視していこう。 【小林 啓倫】 経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。 システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。 Twitter: @akihito Facebook: http://www.facebook.com/akihito.kobayashi
小林 啓倫