なぜ静岡県はリニア着工に反対するのか? 透けて見えるJR東海への怨念
JR東海三つの「静岡飛ばし」
東海道新幹線に乗って、東京や名古屋から静岡駅に行くとする。のぞみが静岡駅に停車しないことは誰でも知っているだろうが、静岡駅で乗り降りした経験がなければ、停車する本数の少なさを実感する機会はないかもしれない。名古屋、東京から静岡へ向かうひかりかこだまは1時間にほぼ3本。途中に小田原駅や浜松駅などに停車するため、東京、名古屋のどちらから行っても概ね1時間くらいかかる。 他の交通手段と比べれば短時間で、取り立てて不便かと言われれば、それほどでもないのかもしれないが、静岡に向かうまでの停車駅で、毎回のぞみが通過するのを待たなくてはいけない。のぞみはダイヤ改正もあって上下線とも1時間に最大12本走ることもあり、このうち、1本くらいは静岡に止めてもいいのではないか、とは静岡県民ならずとも思ってしまう。 ちなみに、のぞみが停車する駅で最も人口が少ない都市は、岡山市(岡山駅※JR西日本が運行する山陽新幹線の駅)で約72万人。静岡駅のある静岡市は約69万人で、それほど変わらない。 これまでも、静岡県はのぞみが県内に停車しないことに不快感を示してきた。過去には石川嘉延元知事(1993~2009年)が県議会で「のぞみの通行税を取る」と発言したこともある。また、富士山静岡空港(牧之原市)に直結させた新駅を造ることは、県の悲願だ。富士山静岡空港の場所を検索すれば一目で分かるが、東海道新幹線の静岡駅と掛川駅の中間地点の真上に建設されている。これは、東海道新幹線と飛行機をつなぎ、県外とのアクセス向上をもくろんだ産物だが、JR東海からは「静岡と掛川両駅の距離が近すぎる。新幹線の高速性が発揮されなくなる」として一蹴されている。川勝知事も過去に要望したが、事実上、一顧だにされなかった。
そこにもってきて、リニアは県内に駅すら建設されない。リニアの駅数は当初、今の予定より少なかった。その後、それぞれの地域の反対で一県一駅に落ち着いたにも関わらず、静岡県だけ駅が置かれないのだ。川勝知事や県民には、JR東海は地元への恩恵はもたらさないのに、水問題というデメリットだけを押しつけてくる企業、というふうに映ってもおかしくはない。