時期尚早だった世界戦。美人モデルボクサーがTKO負け号泣!
女子ボクシングのWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが11日、後楽園ホールで行われ、美人モデルボクサーとして話題を集めていた東洋太平洋女子スーパーバンタム級王者の高野人母美(28歳、協栄)が、王者のダニエラ・ベルムデス(26歳、アルゼンチン)に挑戦したが、4回1分26秒TKOで敗れた。世界初挑戦だった高野は、これで通算成績8勝(5KO)2敗。戦前の予想通り、まだ世界戦は経験不足で早すぎる無謀なマッチメイクだったが、可能性を感じさせる敗戦だった。世界のベルトを腰に巻くためのトレーニングを積むための環境を今後、作れるかどうかだろう。
強烈な右フックが、モデルボクサーのテンプルにヒットするとロープにもたれかかるように膝から崩れた。高野は10カウントを聞かずに立ち上がったが、青コーナーから協栄ジムの萩原トレーナーがタオルを投げ入れた。4ラウンド1分26秒。高野人母美の世界初挑戦は、無残なTKO負けという現実を突きつけられて終わった。 「負けるということを考えてもいなかった。ましてKO負けすることなんて……今は頭の中が真っ白です。正直、よく覚えていないんです」 流血には至らなかったが、打たれた高野の顔が腫れぼったい。 1ラウンドはステップバックを使いながら距離を取った。両者がガツンと衝突した拍子に白い物体が宙を舞ってリングサイドの記者席に飛び込んできた。一瞬、マウスピースかと錯覚したが、その物体は、前日に高野が富岡八幡宮を訪ねて手に入れた「お守り」で胸のサポーターに忍ばせていたものが飛んだのだ。この時点で運が尽きたのかもしれなかった。 2ラウンドも、リーチを活かした左のリードブローが良かったが、ジワジワとチャンピオンに内側から距離を詰められ右のオーバーハングフックを浴びるようになる。高野の息も上がり始めて、ラウンド途中には足がよろけた。 3ラウンドに入ると、右のフックからボディ攻撃を浴び、防戦一方となる場面も。会場から悲鳴が聞こえる。高野はインターバルで呼吸を整えることもできない。もう2階級制覇の歴戦のアルゼンチン人に、つかまるのは時間の問題だった。 4ラウンド。また右のフックから上下を打たれ、強烈な左フックがまともにヒット。「耳がキーンとなって、頭が真っ白になった」という高野は、ラッシュをかけられて最後は右フックに沈んだ。 今回は、スパーリングではダウンしたケースを想定。リング上で、でんぐり返しをして頭をふらつかせてから、スパーを再開するというダウンシュミレーショントも積んできたが、「パンチの威力も、スピードも全然違っていた。気持ちが焦ったし、(パンチを打たれて)足に力が入らなかった」という。 筆者は、世界戦発表時に無謀な世界戦(ミスマッチメイク)と書いた。 世界戦に至るまで9戦のマッチメイクの内容が薄すぎた。レベルの高かった相手は、唯一の黒星を喫したカイ・ジョンソン一人だけ。それで、いきなり世界戦は無謀だ。プロと名のつく競技だけに、話題作りは理解できるし賛成だが、世界戦を組む前には、もうひとつふたつプロセスが必要だった。