知ってるかい? 「イタリア料理」なんて、実は存在しないんだ!
●カルボナーラにも様々な流儀がある
ローマ発祥のカルボナーラには面白い特徴があるよ。なんと、各地域で独特の「カルボナーラ定義」があって、特定の食材を使わないと別物と見なされることがあるんだ。「カルボナーラは生クリームなんて使わない!」って地域もあれば、「卵白を使うなんて問題外!」なんてところも。「牛乳が入っているってことはオリジナルメニュー?」と皮肉っぽく言うヤツもいる。僕からすると、ちょっと保守的すぎじゃない?と思うこともしばしばだけど、それぞれが伝統的な郷土料理のアイデンティティを守っているんだね。ちなみに僕のマンマは生クリームも牛乳も卵も全部入れる派。 ピエモンテ人である僕も、ピエモンテ料理でよく食べるアニョロッティ(詰め物のパスタ)やポレンタ(トウモロコシ料理)、ボネ(チョコレートプリンのようなもの)はほかの地域で食べたり見たりすると、自分のアイデンティティ(=文句!笑)が自然に出ちゃう。だって全然違うんだもん‼
●食以外でも地域ごとに独自性がある
国が統一される前は、それぞれの地域が独自の文化、言語(方言)、料理、法律などを持っていて、現在でも地域ごとの文化や習慣が続いているイタリア。「イタリア」とひと言でいっても、どうも一括りにできないような、多様な文化がいまだに存在しているんだ。 例えば、トリノから隣の大都会であるミラノに行って一番驚くのは、街の仕組みと建築の作り。建物やファッション、話す言葉のアクセントが同じ国と思えないほど、違うんだ。 僕が住むピエモンテはフランスに近いから、建物や街並み、方言などフランスの影響を受けている。一方で南イタリアはアラブなどの影響を強く受けている。特にナポリの方言は、同じイタリア語だと思わないくらい!まったく聞き取れない(笑)。日本に例えると、沖縄弁とか青森の津軽弁などが当てはまるかな?その地域にしかないものって、食べ物だろうが方言だろうが、何だか特別感があって良いよね!
●日本でのイタリア料理
日本では、イタリア国内各地のメジャーな料理を取り入れたレストランがイタリア料理店と名乗ってきた。でも個人的には、「イタリア料理」よりも「ローマ料理」や「トスカーナ料理」といった呼び方を見ると、とても興味が湧くよ! 実はね、ここだけの話だけど、僕はピエモンテのことなら詳しくて自信がある。でも、ピエモンテから離れると少しずつ自信が減っていくし、食べたことがない料理がたくさんあるのよ。日本は同じ街にいるだけでいろんな世界の地方料理を楽しめるから最高だよね! ピエモンテではピエモンテ料理がほとんどだよ。 みなさん、これからは相手を誘うときに「イタリア料理を食べに行かない?」ではなく、「トスカーナ料理はどうだい?」と誘うのはどう? カッコ良くない?きっと、より深い食文化の楽しみが広がるよ。
● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)