知られざる「東海道新幹線」 “ママさん運転士”に密着……マル秘テクの「頭の中」 真夜中のレア現場にも潜入!『every.特集』
■1本1500メートル…トロリ線を交換
移動すること約10分。保守作業用の車両が止まりました。車両の上に登ると、コルク栓のような、大きなドラムのような物体が見えました。 新幹線鉄道事業本部・豊橋電気技術センターの長谷悟所長 「あれはトロリ線になります」 パンタグラフが接触することで、電車に電力を供給するトロリ線。これから始まる作業は、数年に一度行う、トロリ線の張り替え工事です。この区間では10年ぶりといいます。 連なっていた作業車両が少しずつ離れ、それなりの距離を保ち始めました。この日張り替えるトロリ線は、1本の長さが1500メートルです。 長谷所長 「(1台ずつ)それぞれ役割がありまして、6台が連なって作業を行っています」
■「架線」にハンガーを掛けて仮置き
新品のトロリ線を積んだ1号車が動き出しました。その後を、張り替えを担う2号車が追いかけます。その2号車の作業員は、トロリ線を吊るす「架線」にヒョイヒョイと何かを付け始めました。 「新しいトロリ線を、仮ハンガーを使って仮置きをしている状態になります」と長谷所長。2号車の作業員は移動しながら新しいトロリ線をS字ハンガーで架線に引っ掛け、まずは仮置きをしていました。 約50メートル間隔でトロリ線を支える支柱があるため、頭がぶつからないよう、巧みにかわしながらの作業です。 続く3号車の作業員は、仮置きした新しいトロリ線にわずかでもねじれがないかを触りながら確認する役割です。20分後、新しいトロリ線1500メートルの仮設置が完了しました。
■一番電車の通過を見届けて任務完了
次に始まったのが、仮設置したトロリ線を伸ばす作業。「はい、3トン」という声が響きました。1500メートル離れた6号車と1号車が両端からゆっくりと引っ張り、伸びる分だけ伸ばします。伸ばし切って固定することで、その後の伸びが防げるといいます。 それが終わると、進行方向をチェンジ。いよいよ、新旧のトロリ線の交換がスタートします。2~5号車が各担当エリアで、古いトロリ線を固定金具から外し、新しいトロリ線を留めていきます。 すべてを固定すると、2号車で仮のS字ハンガーを余さず回収しながら、1号車で古いトロリ線1500メートルを巻き取っていきます。 午前4時すぎ、すべての作業が終了しました。これまでのトロリ線が、ピカピカのトロリ線に生まれ変わりました。 新生テクノス株式会社・新幹線豊橋営業所の大瀬良浩幸さん(工事指揮者) 「新幹線が定時できちんと走れるように、無事故無災害でこれからもやっていきたいと思っています」 朝6時半。「通過ヨシ!」と一番電車が無事に通過するのを見届け、任務完了です。 ニッポンの大動脈の東海道新幹線。安全安心で快適な運行は、こうした多くの仕事人たちによって、守られているのです。 (5月1日『news every.』より)