知られざる「東海道新幹線」 “ママさん運転士”に密着……マル秘テクの「頭の中」 真夜中のレア現場にも潜入!『every.特集』
■秒単位の運行は、緻密な計算あってこそ
出発直後、まずチェックするのがブレーキの利き具合だといいます。「列車によってもブレーキ力が違いますし、お客様の乗っている人数によっても変わるので」。松本さんは、インタビュー取材にそう教えてくれました。 1つ目に停まる品川駅で、その具合を見極めなければなりません。ブレーキの状況を確かめながら、品川駅に到着です。「10秒延着」と時刻を確認する松本さん。10秒遅れでの到着となりました。秒単位の到着を、停車するすべての駅で繰り返します。 こうした運行を支えるのが、頭の中での計算です。「暗算で次の駅までの時間と距離を(もとに)、今平均何キロで走ればいいかを計算しながら走行しています」と松本さんはインタビューに語りました。 次の駅までの残りの距離から、予定時刻に到着するよう、暗算で常に最適なスピードを割り出します。秒単位の運行は、緻密な計算があってこそです。 とはいえ、松本さんの頭の中は、スピード重視ではありません。「お客様の乗り心地を考えて、無駄なブレーキを極力かけないように」と心がけているそうです。 刻々と変わる制限速度をすべて記憶し、速度が制限される場所に差しかかる前にスピードを落とします。例えば制限時速275キロの場所なら273キロに抑えると、自動ブレーキがかかりません。そうした細かな運転が、安定した、乗り心地の良さにつながるといいます。
■「本当にやりがいのある仕事」
些細なことでも異変に気付いたら即対処しなければならない緊張感と、暗算。それを繰り返しながら、名古屋駅に到着しました。線路脇にある停止位置目標と、運転席にある目印がピタリ。「5秒早着」と松本さん。定刻の5秒前、12時13分55秒に到着しました。 松本さん 「本当にやりがいのある仕事だと思います。特に年末年始でお客様が多く乗られている時は、今からこの方々が大切な人に会いに行くんだなと思うと、気が引き締まります」 名古屋でこの日1回目の乗務を終え、次の乗務に向けてスタンバイします。