<“ビジネスマン”トランプと外交でどう付き合うか>第二次政権10の見通しと日本が持つべき3つの視点
第十に、分断された社会における統一権力が生まれる。共和党はホワイトハウス、最高裁、上院を手に入れ、下院も支配下に置く。米国の分断は、米国の敵が喜ぶ状況である。トランプはその状況を更に悪化させるとしか考えられない。 * * *
トランプの視座は経済・ビジネス
ウォルトは、カマラ・ハリスに投票するよう呼びかけてきたが、結果はトランプの圧勝となった。ウォルトはこの論説で外交政策を中心に第二期トランプ政権の見通しについて10項目を指摘している。トランプについて、日本から見て重要と考えられる点を幾つか論じる。 第一に、トランプが世界を見る時、基本的な視座は安全保障の観点からではなく、経済・ビジネスの観点からである。現実の世界は、安全保障だけでも、経済・ビジネスだけでも割り切れるものではないが、トランプは、生来、ビジネスマンであり、敵味方の区別は銭勘定から出発する。だから、経済政策で利害衝突があるEUは「敵」と呼ばれ、半導体産業でのライバルの台湾には冷淡となる。 第二に、敵味方の峻別が容赦なく、かつ、融通無碍である。基本は「アメリカ第一」であり、自分第一である。 「西側」とか「欧米同盟」とか「G7の結束」といった概念は響かない。永続的な味方もないし、永続的な敵もない。 従来、理念や価値を共有していると考えられていた存在も、利害の相克が気になれば、容易に「敵」扱いされる。敵とされていた存在も、自分の利益になれば、「味方」に転じうる。 人の好き嫌いが激しい。自分に説教しようとする者や自分を尊重しない者は嫌い。自分と波長が合う者や取引ができる相手を好む。 第三に、経済・ビジネスの視座から世界を見れば、同盟は間尺に合わない。「理念や価値を共有している外国を守るために、米国人が血を流す」といった仕組みには反感を覚える。紛争や戦争は避ける。 米国が偉大な存在であるために、強大な軍事力を持つのは良い。しかし、それを戦争で使うのは銭勘定が合わない。 トランプの考えの素の部分はこうしたものではないかと思われるが、現実の世界を踏まえてどこまで関与や行動を引き出せるかの勝負となろう。日本として、どのようにアプローチすべきなのか。