新型コロナウイルスは「第3の破局」を招くか 「神の領域」に立ち向かう「人間の本質」
新型コロナウイルスの猛威が続いています。人類の歴史は感染症との闘いの歴史ともいわれ、パンデミックは幾度となく社会が大きく変わるきっかけになってきました。今回はいったいどうなるのでしょうか。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は現在の状況を「都市化に伴う3回目の破局ととらえることもできるのでは」と話します。若山氏が独自の文化力学的な視点で論じます。
グレタさんの感染疑いは象徴的
街を歩く人のほとんどがマスクをつけるようになってからだいぶ時間が経つ。そのあいだにも、樹々の若葉が、芽吹き、育ち、陽を浴びて、風に揺れる。生命はその循環的な営みをひとときも止めることなく、四季は巡る。 新型コロナウイルスは少し収まり気味のようだが、医療機関はまだまだ大変だろう。国の政策を批判したいところだが、すでに多くの人がしているので、それはさておき、これまで僕が建築の近代化との関係で見てきた「都市化の過剰と破局」という現象と組み合わせて、今回のウイルス拡大について俯瞰的に考察したい。 地球温暖化の問題を激しく訴えてきたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんも感染した疑いがある、というニュースに何かしら象徴的なものを感じた。現在、新型コロナウイルスと地球温暖化は、特に結びつけて語られてはいない。しかし温暖化とそれにともなう気候変動は、他のいくつかのウイルスなどの病原体による感染症が拡大する原因ともされ、昆虫など多くの生物種の絶滅をもたらしているとも指摘される。そしてこの二つの現象はどちらも、人類の過剰な都市化によってもたらされているように思えるのだ。
都市化を加速させる「技術革新」が「過剰と破局」に
建築の巨視的な変化を追い続けてきた経験から「人類は都市化する動物であり、同時にその心に都市化に対する『反力』をやどす動物である」と書いてきた。そして時として都市化には、その過剰による破局という現象が見られる。 破局(カタストロフィ)とは、健常な社会システムの悲劇的な崩壊を意味し、人為的なものだけでも戦争、内乱、革命、恐慌、大事故などがある。そういったものは、広い意味での都市化の過剰によってもたらされている場合が多く、歴史はその破局によって大きく変化する。 また都市化は、指数関数的な現象であって、19世紀以前と以後とではまったく様相が異なる。長期的に見れば横ばいだった世界人口が、19世紀を境に、ほぼ垂直に上昇するのだが、その増加人口はほとんどが都市に集中しているので、これは「都市爆発」と呼んでもいい。そしてその近代的都市化は何らかの「技術革新」によって大きく加速され、それが「過剰と破局」の現象と同期するように感じられるのだ。