なぜWBA世界挑戦者決定戦に判定で圧勝した亀田和毅は第二の故郷メキシコで大ブーイングを浴びたのか?
右の拳を痛めるアクシデントを負っていたのだ。 亀田は今年5月に大阪での無観客試合で約2年ぶりの再起戦を行い、三宅寛典(ビッグアーム)に判定勝ちしたが、右の拳を痛めて使えず、途中ダウンを喫するなどしていた。おそらく、その“爆弾”を抱えたままのリングだったのだろう。 「右と左のフックが当たったが、右を痛めてから、右を打たれへんようになったのがきつかった」 どのラウンドで拳を痛めたかは明かさなかったが、スピードに乗った左手一本だけで試合をコントロールしていた。左のジャブ、左フック、左の上下と鮮やかに打ち分けた。3ラウンドの終わりには左5連発。パレホも亀田と同じようなファイトスタイルと距離で、左を使って対抗したが、いかんせん、迫力不足。亀田は、ブロックと反応で、自らは無傷のまま35歳のランカーの攻撃を封じ込んでいた。 山場は7ラウンドだけ。亀田は右から左と初めてラフに攻めた。左の3連発から右のフックにつなげる高速コンビネーションでコーナーに詰め、左右のフックで追い詰めたが、ダウンにつながるダメージを与えるまでには至らなかった。 8ラウンド以降は、クリンチでパレホの反撃を潰す時間も目立った。もう7回の攻勢で右手は限界だったのかもしれない。 「相手も世界ランカーでキャリアがある。左だけで勝つことは難しい。それでも左だけで勝てた。大差判定で左だけでいけたのは自信にはなった」 プロとして求められる魅せる試合はできなかったが、アクシデントを乗り越えて、挑戦者決定戦という重要な世界前哨戦を制したことに亀田も手応えを感じた。「無事に勝てた。勝たないと次につながらないので良かった」の言葉が本音だろう。
今回の挑戦者決定戦は、後援者のサポートを受けながら自らマッチメイクから資金作りまで走り回った。 「今回、すべて自分主催で試合を組んだ。初めて自分でやった」 地上波などのバックアップはなく、自らの公式Youtubeチャンネルでライブ配信した。インターバルの間に流された牛カツ店「牛カツ 京都勝牛」と糖質をカットする炊飯器「LOCABO」のCMがSNSで話題になったが、周囲のサポートを受けながら自らスポンサーを集めたもの。1万人以上がライブで視聴し、13日の午前6時の時点で、累計で約12万回の再生があった。 米国ラスベガスのメイウェザージムで調整を行い、この日、鮮烈の左ボディブローで暫定王者との統一戦をKO勝利したWBC世界バンタム級王者、ノニト・ドネア(フィリピン)と収穫を得たスパーリングもやったが、試合が1週間延期されるハプニングにも巻き込まれた。 それでも「海外は、そういうのは当たり前。15歳からメキシコにいっているから慣れている。問題はなかった」と逞しかった。メキシコの修行時代から支えてくれていた夫人からも「集中切らさずに頑張って」と励まされたという。 リング上で亀田は「来年は絶対に世界戦、チャンピオンになるので応援お願いします」と約束した。 亀田がターゲットにするのはWBAのスーパー王者のアフマダリエフだ。 リオ五輪銅メダリストのウズベキスタンのアマエリートで、プロ転向8戦目で2団体の統一王者だったダニエル・ローマン(米)に判定勝利して2つのベルトを手にした。上背はないが、アマの基礎技術に加えて、多彩な攻撃スタイルに、当て勘とパンチ力があり、今年4月には地元のウズベキスタンにIBF世界スーパーバンタム級暫定王者だった岩佐亮佑(セレス)を迎え5回TKO勝利した。早すぎるストップに物議を醸す試合だったが、今年11月にはホセ・ベラスケス(チリ)を相手に判定で2度目の防衛に成功している。 亀田はアウトボクシングの技術とスピードでは上回っているが、それだけではさばけぬ爆発力がアフマダリエフにはある。 「次の試合はたぶん、2つのベルトを持っているアフマダリエフになると思う。まだしっかりとビデオを見ていない。これからビデオを見て、研究してどう戦うかを考えていく」 ただベラスケスは、本来のWBAの指名挑戦者だったロニー・リオス(米)が新型コロナに感染したための代役で、次期挑戦者は、亀田になるのか、そのリオスになるのか、まだ決まっていない。