亀田和毅が大差判定で敗れWBC世界王座統一失敗も「もう1度世界王者に」と“スピード再起宣言”
プロボクシングのWBC世界スーパーバンタム級王座統一戦が13日(日本時間14日)、 米国カリフォルニア州カーソンのディグニティヘルス・スポーツパークで行われ、暫定王者の亀田和毅(28、協栄)が0-3判定(3者が110―117)で敗れ、無敗の正規王者のレイ・バルガス(28、メキシコ)が王座を統一、5度目の防衛に成功した。地元ファンは、手数を優先して打ち合わなかったバルガスにブーイングを浴びせた。試合後、亀田はリング上で「もう一度世界チャンプになる」とリベンジを誓った。亀田の戦績は36勝(20KO)3敗となった。 12ラウンド終了後の両者の姿に勝敗の行方が象徴されていた。バルガスはコーナーに駆け上がり、亀田は得意の派手なパフォーマンスは行わなかった。だが、最後の最後まで堂々と打ち合わなかったバルガスに地元ファンは大ブーイング。むしろ亀田の健闘を称えた。 判定を待つ間。セコンドについた父の史郎氏が「あきらめるな」「大丈夫や」と励ましていたが、結果は、3者共に「117-110」でバルガスを支持した。 「スピードでは亀田」「体格ではバルガス」のアンバランスを埋めるため亀田は、今までにない奇抜な戦法に出た。リーチで9センチの差があるジャブの差し合いから始まるオーソドックスな戦い方を捨て、上半身を大きく揺らしながらプレスをかけてロープを背負わせ、左右の強烈なフックを浴びせるという大胆なスタイルで勝負した。全盛期のマイク・タイソンが身長、リーチで劣る相手を倒すために取った戦術である。 4ラウンド。素早い動きから見事にインサイドに入った亀田はバルガスに左のボデイから右フック、左フック、右ストレートとつなげる美しいコンビネーションブローを決めた。 「嫌がっている。ここチャンスや!」 史郎氏の大きな声が飛ぶ。 だが、詰め切れない。
父・史郎氏が「根性や!」と檄
対するバルガスは、アッパーを使って前進を止め、圧倒的な手数で対抗するという手段に出た。5ラウンドには逆にワンツーをヒットされた。 「もう一歩や」 「前行け!」 「根性や」 史郎氏は、その檄を繰り返した。 この戦術で、大ぶりなフックを当てるには、あと1歩の踏み込みが重要になる。その「あと1歩」をセコンドが促したのだが、33戦無敗のバルガスは、したたかだった。 ステップバックを使って大きなパンチを外すと、コンビネーションをまとめてポイントをゲット。さらに突っ込んでくると、クリンチで絡めた。 その展開を打開しようと9ラウンドに亀田はノーガードで両手を広げて挑発したが、バルガスは乗ってこず、決定的なシーンを作れないまま試合は最終ラウンドへ。 「ええか。最後倒せよ。倒さなあかんよ」 陣営もポイントで不利なことがわかっていたのだろう。最後のインターバルで史郎氏は、そう指示した。 亀田は怒涛の突進から一発逆転を狙ったが、あと1歩が届かず、うまくクリンチで封じられた。焦る亀田は、レフェリーのブレイクが入ったところで、左右のパンチを繰り出して、無警戒のバルガスが顔をそむけ、その反則行為に「1点減点」のペナルティを受けた。 バルデスは、足を使ってパンチを避け、手数でごまかしラウンドを積み重ねていくという“逃げのボクシング”に徹したため、場内からは何度もブーイングが起きた。 亀田の勇気は最後まで空回りして世界ベルト失うことになった。 終盤もプレスは続けていたが手数は減った。「あと1歩」の踏み込みと、逃げる相手を追う工夫。そしてバルガスのボクシングに対しての試合途中の対応力が足りなかった。 バルガスは、亀田がメキシコで修業をしていた2007年にアマチュアの試合で対戦して判定負けした因縁相手。亀田の唯一の黒星相手への12年越しのリベンジは果たせなかった。 試合後、バルデスは、リング上で「多くのパンチで勝つ。頭を使うインテリジェンスなボクシングが作戦だった」とうそぶいた。 一方の亀田もリング上でインタビューを受けてスペイン語で応対。多くの声援を送ってくれた日本からのファン、地元のファンへ感謝の気持ちを伝え、「もう1度世界チャンプ」になると、再起を宣言した。 試合会場には、WBA、IBFの同級統一王者のダニエル・ローマン(米国)が招待されていて、試合後、バルガスは「3つのベルトをかけて戦おう」と統一戦を呼び掛けた。だが、この試合の勝者は、挑戦者決定戦を勝ったベテランの強打者、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)との指名試合が義務づけられている。