ソニーから独立して10年、ノジマグループとなるPCメーカー「VAIO」社長が語る“純国産”メーカーのこだわり
■ ハイエンドな高級路線だけにこだわらないワケ ──かつて日本の家電製品は高機能や多機能を追い求めすぎて“ガラパゴス化”し、それも要因となって海外メーカーとの価格競争に負けた側面があります。そこはどう考えていますか。 山野 パソコンはテレビなどと違って、自分の手で操る相棒です。その点で言えば、パソコンはむしろ走りや乗り心地の優劣があるクルマと同じ評価ジャンルと言えるでしょう。 クルマにこだわる人は安ければいいわけではなく、こだわりをもって高級車に乗る方もいる。クルマほどこだわりは大きくないかもしれませんが、パソコンにもクルマに近い世界観があると思っています。 ──となると、今後もVAIOはハイエンドな高級路線に比重を置くのでしょうか。 山野 自動車メーカーもフラッグシップの高級車から中級者用、さらに大衆車までラインアップしているように、当社もハイエンドに加えてアドバンス、スタンダードと3層展開にしています。「松」だけでなく「竹」や「梅」の商品もバランスよく取りそろえていくということです。 実は私が社長に就くまでは、「松」のラインアップしかなく、そこを変えていきましたが、特に「梅」の商品、商品シリーズ名で言えば「VAIO Pro BM・BK」(法人向け)という機種を最初に世に送り出す際は苦労しました。 現場のエンジニアは「VAIOである以上、とんがったものを作りたい。自分たちがそんなスタンダードゾーンの製品を作るんですか?」と言うわけです。私は、「ハイエンドの商品は1万人しか評価してくれないかもしれないけれど、スタンダードの商品なら100万人が評価してくれるかもしれない。松だけではなく梅の商品も作ることによって、先々、そこから得た原価低減の効果でより良い松の商品が作れるようになる」と説得しました。 コストを下げるための源泉はやはり販売ボリュームです。数を売ればコストが下がり、コストが下がればもっと売れるようになるという好循環が生まれます。 ──ソニーから独立して節目の10年を迎えましたが、次の10年を見据えてどんな未来像を描いていますか。 山野 VAIOのパソコンはユーザーの“拡張頭脳”、人間が一人ではできないことを突き詰めていくのがわれわれの役割だと思っています。社員にはよく「パソコンの未来は、(映画の)スターウォーズに登場した『R2-D2』だ」と言っています。R2-D2は賢くかわいく愛嬌がある万能ロボットですが、VAIOの究極の姿はそこに重なる気がしています。 これだけ技術進歩が早い社会ですので、10年先を読むよりも、目の前の2、3年を見て常に半歩先を行くことを目指したいと考えています。そして、10年後に振り返った時、「ここまでの高みに来たと言えるようにしよう」と社内では呼びかけています。
河野 圭祐