「風が吹いただけで痛い」といわれる痛風の本当の「害」は、じつはその“痛み”にあるのではなかった!
心臓から全身を巡り、腎臓に送られてきた血液は、糸球体でろ過されて、そのろ過されたゴミと水分が一緒になって原尿になります。1日当たり原尿は約150リットルも作られているのですが、そのうちの99%が尿細管で再吸収されて、血液に戻されます。 原尿には、尿素やクレアチニンといったゴミだけではなく、アミノ酸やブドウ糖、電解質といった有用な成分もたくさん含まれています。それらの有用な成分は、水分と一緒に尿細管で再吸収されていきます。
また、細胞が正常に働くためには体液は「弱アルカリ性」に保たれている必要があります。もし酸性に傾きそうなときには、腎臓が尿細管での電解質の再吸収の量を増減して、弱アルカリ性に戻すように調節します。 このように、腎臓は体液のバランスを保つために休むことなく働き続けて、全身の細胞が活動するのに最適な状態を維持しているのです。脳や心臓、腸ほど注目されることはない腎臓ですが、じつは総合的な役割を果たしているのです。
■生活習慣の乱れが招く「メタボリックドミノ」 いまからおよそ20年前に、「メタボリックドミノ」という考え方が提唱されました。飲み過ぎ・食べ過ぎ・運動不足といった生活習慣の乱れがスタートとなり、内臓の周りに脂肪がたっぷりとついてしまう「内臓脂肪蓄積型肥満」になると、食後高血糖や高血圧、脂質異常症が起こりやすくなります。 実際にこれらの状態になってしまったら、まるでドミノ倒しのように、肝臓、心臓など広範囲にわたって機能が低下していき、やがて心不全や脳卒中で死に至る可能性も出てくる……これがメタボリックドミノです。
■メタボリックドミノの先には「腎臓病」が待っている もちろん、腎臓病も例に漏れず、メタボが脂肪肝や糖尿病の状態へとつながり、さらにそれが慢性腎臓病へとつながっていきます。 実際、内臓脂肪型肥満の人はそうでない人に比べ、年齢が進むと慢性腎臓病を発症するリスクが高い傾向があるという研究が、米国腎臓学会の学会誌に発表されています。 このようにひとつの病気が原因となって、連鎖的にさまざまな病気が起こるのは、臓器と臓器が連携する臓器間ネットワークが構築されているからです。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm上で、血糖・血圧・脂質のうち、ふたつ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断されます。 これらの条件に当てはまったら、生活習慣を改善することで、下流にある心不全や脳卒中、認知症、そして慢性腎臓病を防ぐことが重要です。
髙取 優二 :医学博士、腎臓専門医