中国の「巨大すぎるダム」計画に国内外から懸念の声 国境紛争にも発展か
中国当局がヒマラヤ山脈の峡谷に巨大な水力発電ダムをいくつも建設する計画を推し進めている。この峡谷の深さは、米国のグランド・キャニオンの3倍にもなる。このダム建設計画については、チベットの人権団体やインド政府から懸念する声が上がっている。 【絶景】ヒマラヤ山脈の深い峡谷を流れるヤルンズアンボ川 チベットからインド、バングラデシュへと流れるヤルンズアンボ川(雅魯蔵布江)の下流域にダムを作る計画を中国政府が承認したと、国営通信社の新華社が12月25日に報じた。 新華社はこの事業について以下のように述べている。 「わが国がグリーンで低炭素なエネルギーに移行するうえで大きな一歩だ。チベットで生活するすべての民族にも進歩と幸福と安心の感覚をもたらすだろう」 このダムの建設場所や建設の開始時期、承認された事業の規模については、新華社は何も述べていない。 ヤルンズアンボ川は、源流が世界一の標高を誇る川であり、陸上では世界最大の深さをもつ峡谷を流れている。峡谷の深さは、5000メートル以上に達するところもある。そんな川にダムを作るという工学的な難題を建設業者がどう解決するつもりなのかも、新華社は明らかにしていない。 急斜面の峡谷を約500キロかけて、5500メートル近い標高差で下っていく奔流を、中国政府は再生可能電力の重要な未活用資源として長らく見てきた。この事業は、中国共産党が2021年に発表した直近の経済開発5ヵ年計画に盛り込まれていた。 ある地方水資源局の概算によれば、このダムの発電量は長江中流域にある三峡ダムの3倍にも上る可能性がある。この一連の事業にかかる総費用は1兆元(約21兆6000億円)にも上りうると同局は2023年に述べている。 中国の政治家たちは、すでにかなりダムが作られている長江の下流域以外で、どこかの川上に新しいエネルギー源がないかと探している。政治家たちはチベット高原中で事業計画をいくつも提案しており、この事業もそのひとつだ。
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