僧侶でありながら「神も仏もない」と思った時期も。障害がありながら「懸命に生きる3人の息子たち」と共に生きる日々【体験談】
描いた絵がほめられたり、喜んでくれたりするのがうれしくて…
――長男はその後保育園に入園したのですね。 窪田 医療的ケア児である二男に手がかかるので、長男を保育園に預けようという話になりましたが、当時は待機児童が問題視されていたこともあってなかなか見つかりませんでした。ようやく受け入れてくれる保育園を見つけホッとしたものの、一緒にいる健常な子との差をまざまざと見せつけられた時間でもありました。 保育園は長男にとってあまり居心地のいい場所ではなかったようです。小さな子どもたちが息子の状態を理解できるわけはありませんから、悪気はないとはいえしゃべれないことでばかにされるような場面もあったようです。 その長男が小学校に入学したころから、ひとり遊びをしていると思ったら、突然絵を描き始めていたんですよ。それからは暇さえあれば絵の道具を持ち出してずっと絵を描いたり、はさみを使っていろいろ切ったり貼ったり折ったりしていました。 ――絵画展を開いたり、絵画コンクールに入賞したり、長男の描いた絵は多方面から高く評価されています。 窪田 絵を描くのがとても好きな様子だったので、「才能があるなら伸ばせたら」と絵画教室を探しましたが、なかなか彼に合う教室が見つかりませんでした。それなら家に先生に来てもらおうと、「くつろぎば」の工作ワークショップで教えてくださっていた芸大の先生にお願いすることにしました。 コロナ禍だったこともあって、それから週に2回くらい、先生が来てくださるようになりました。「技術を教えると彼のよさがなくなってしまうから」と、ときどきモノの見方やバランスの取り方などはアドバイスしてくれますが、基本は隣にいて一緒に絵を描くスタイルです。それが彼にはとても心地よかったようです。 自分の絵がほめられたり、自分があげた絵をみんなが喜んでくれたりする機会が増えたことで、自信がついたのか、それからは学校へも楽しく通えるようになったようです。 「学校に行きたくない」と不登校気味な状態が続いたことがありましたが、その間も絵だけはずっと描いていましたね。彼にとってコロナ期間はちょうどいいお休みだったのかもしれません。