精神疾患の母、いじめのフルコース…苦難を乗り越えケアマネージャーになった40代男性がいま抱く「絶望感」
焼きのりと氷砂糖で飢えを我慢した貧困生活
義人さんは、小学生時代を振り返り一番辛かったのは昼食だと話します。 「お金はないし、不登校で給食は食べられない。夕飯までひもじい状態が続き、学校からの下校時間に合わせて帰宅するものの、家にある食べ物は焼きのりや梅酒用の氷砂糖だけで、それらでとりあえず飢えをしのぐ 。 そんな生活が辛いので仕方なく学校に行くようになりました。家よりまだマシなものの、行けばいじめが待っています。休みがちなので勉強はついていけません」(義人さん) 小学校高学年になると、さすがに学校も動きました。家庭訪問や、学級会での話し合いを経て、いじめは減りました。 「急に馴れ馴れしく友達みたいに接してきたり、先生の変なやさしさが気味悪かったです」(義人さん) その頃から母親もやっと精神疾患の治療がスタート。ちょっと離れたところにアパートを借り別居生活が始まりました。 義人さんが中学校の頃、いじめもようやくおさまり、父も仕事に集中できる環境になりました。
介護職を目指したきっかけ
義人さんは高校を卒業、大学受験に失敗、介護の専門学校を受験するものの試験に落ちてしまいました。その後は職業を転々とする生活……。 その頃、母方の祖父が癌で他界、祖母が脳梗塞で倒れてしまいました。義人さんはもともと接客業につくことと資格取得の両方を考えていて、この祖母の病気をきっかけの一つとして「(旧)ホームヘルパー2級」の資格を取りました。 その後、認知症のグループホームで仕事を開始、介護福祉士を経て介護支援専門員の資格を取得。また、交際相手と知り合い結婚、子どもも生まれ、介護士とケアマネージャーを兼務していました。
ケアマネージャーにのしかかる高額な更新研修
義人さんによれば、新型コロナウイルスが流行後、ケアマネージャーの欠勤や離職が相次いでいるといいます。 「同僚が次々と出勤停止、ご利用者から新型コロナウイルスに感染したこともありました。体調不良によりケアマネジャーが半年で4人も辞めてしまい事業所存続の危機を迎え、募集をかけても応募がない。居宅ケアマネジャーに魅力が無いことに絶望感を持っています」(義人さん) ケアマネージャーの資格は、5~6万円前後の高額な受講料を払い、5年毎に更新研修を受講する必要があります。さらに研修時間90時間を全て休まずに消化しなければ、資格を取り消されてしまいます。ただでさえ担い手不足の中、これでいいのか……。 * * * 厚生労働省はケアマネージャーの更新研修制度の改善を進めようとしていますが、義人さんは更新研修制度に代わる方法があると断言します。詳しくは、後編〈いじめや不登校を乗り越えケアマネージャーになった40代男性が力説…介護保険制度自体への「強い違和感」〉でご説明します。 ---------- 奥村シンゴ 大阪相談支援KAVERIケアラー事業部責任者、介護福祉ライター、講師、支援団体「よしてよせての会」代表。 NHKで解説の他、取材・執筆や大学・自治体など講演多数。また、大阪や兵庫(宝塚中心)に啓発や居場所活動を積極的に展開中。 著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』2023年夏国際ソロプチミスト神戸東クローバー賞受賞。介護離職や若者ケアラー~就職氷河期10年(ダブルケア、ひきこもり含)経験。生粋の阪神ファン。 ツイッター @okumurashingo43 Facebook、TikTokは 奥村シンゴ で検索 ----------
奥村 シンゴ(大阪相談支援KAVERIケアラー事業部責任者、介護福祉ライター、講師、支援団体「よしてよせての会」代表)