「安くて当然」を覆す! 「豆腐バー」「うにのようなとうふ」なぜヒット? “豆腐革命”の正体に迫る
「硬い豆腐が売れるとは思えない」を覆す
最初にできたはんぺん状のプロトタイプを、セブン‐イレブン・ジャパンに持ち込んだところ、「面白いがこのままだと心許ない。もっとしっかりした硬さで、味もしっかりしていて、手を汚さずに食べられて、タンパク質が最低10グラムは入れてほしい」と、宿題を出された。 それらの課題を解決して、発売に漕ぎつけた。 セブン‐イレブンが売ってくれそうだとなると、社内の空気が変わった。それまでは、「硬い豆腐が売れるとは思えない」と白い目で見られてきたという。池田氏と1名の部下で、工場の片隅で試行錯誤を続けきた。ところが老舗豆腐メーカーの高度な知見が投入され、アサヒコならではの完成度の高い商品に仕上がった。 最初に発売したのは、プレーンタイプの「旨み昆布」。1年間はアサヒコのナショナル・ブランド(NB)として販売。2022年1月からは、セブン&アイ・ホールディングスのプライベート・ブランド(PB)となった。同年秋からは、競合の「ファミリーマート」「ローソン」でもPBとして販売されている。 意識的に「サラダチキンバー」の隣へ置かれ、顧客がその日の気分で、タンパク源をチキンと豆腐から選べるようにした。 このようにコンビニから火が付いた豆腐バーは、今ではスーパー、ドラッグストアなどでも売られるようになり、定着したと言えるだろう。2024年10月末までに累計約7500万本が販売されている。 現在販売されているのは、「旨み豆腐」「バジルソルト風味」「すき焼き風」「蓮根と枝豆」「日高昆布と大豆」の5種。また、豆腐のおやつとして、「スイートポテトバー」「濃抹茶バー」「香ほうじ茶バー」の3種がある。合わせて8種となっている。
ガンダム好きの3代目社長の趣味でつくった商品
相模屋食料の「BEYOND TOFUシリーズ」は、おいしさと植物性由来食品のヘルシーさの両立を追求。「植物性タンパク質の食品=ヘルシーだけどおいしくない」という、従来のイメージの払拭を目指している。 不二製油の特許技術を用いてつくられた、油分が多いプレミアム豆乳の「豆乳クリーム」や、油分が少ない「低脂肪豆乳」を、原料に使用。 現状、「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」「BEYOND TOFU ピザ・シュレッド」「うにのようなビヨンドとうふ」「白子のようなビヨンドとうふ」を、主にスーパーで販売している。 一番人気の、うにのようなビヨンドとうふは、まるでうにのような味わいや食感を実現した豆腐。そのままわさび醤油をかけたり、ご飯に乗せて贅沢なうにご飯のようにしたりして食べる。かき混ぜるとソース状になるので、パスタなどにアレンジする人が多く、SNSにアレンジレシピが数多く投稿されている。2022年3月に発売し、2024年7月には累計出荷数1000万パックを超えている。 白子のようなビヨンドとうふは、高級で希少な冬の味覚であるふぐの白子を豆腐で再現しようとした商品。白子のようなとろける口どけと、濃厚な魚介のうまみがたっぷりあるのが特徴。昆布ぽん酢ともみじおろしで食べる。2024年8月発売で、当初見込みの3倍売れている。 マスカルポーネのようなナチュラルとうふは、クリーミィな食感と濃厚でコクのある味わいの豆腐。スプーンですくって食べるスタイルで、オリーブオイルや蜂蜜を掛けて食べるという、従来の絹や木綿とは異なる食べ方を提案する。 BEYOND TOFU ピザ・シュレッドは、ピザ用チーズのようにシュレッド状になった商品で、ピザ、グラタン、パスタなどのトッピングとして人気。チーズのような味わいと食感、加熱するとトロリと溶ける性質を持つ。他にブロック状になった「BEYOND TOFU ブロックタイプ」、オリーブオイル漬けでお酒のおつまみになる「BEYOND TOFU オリーブオイル漬け」もある。 BEYOND TOFUシリーズが生まれてきた背景として、2012年3月に期間限定で発売した「ザクとうふ」のヒットがある。アニメ『機動戦士ガンダム』に出てくるモビルスーツ「ザク」の頭部をかたどった、パッケージが特徴的。累計出荷数は500万機(ガンダムへのリスペクトから機と数える)に上った。ガンダムシリーズは他に「百式とうふ」など。 同社広報によれば、「ガンダム好きの3代目・鳥越淳司社長の趣味でつくった商品で、ガンダムのコアファン層である、30~40代の男性が豆腐売場に押し寄せる現象を起こした」とのこと。ザクとうふの登場以前には、豆腐にはターゲットを絞った付加価値の高い商品という概念がなかったという。同社のユニークな商品群は、鳥越社長のアイデアによって生み出されている。 2014年8月に発売したマスカルポーネのようなナチュラルとうふのターゲットは、20~30代女性。ダイエットや健康のために食べるという、潜在的なニーズがあると考えた。この商品も人気となった。 相模屋食料は創業73年の老舗豆腐メーカーで、売上高は410億円(2023年度)。過去10年で5倍と鰻登りだ。これは、革新的な商品づくりだけでなく、継続困難な全国の豆腐メーカー12社を次々にグループ化して、再建に取り組んでいるからでもある。