300万円台の輸入車は今や貴重な存在! フェイスリフトで内外装が新しくなったVW Tクロスにモータージャーナリストの高平高輝が試乗した!
一番の収穫は「角が取れた清々しい乗り味」
フォルクスワーゲン(VW)ポロ・ベースのBセグメントSUV、Tクロス。日本市場での販売は好調で、Tロックとともにゴルフに次ぐ勢力となった。今回の改良の成果次第では、王者ゴルフを脅かすことになるかもしれない。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。 【写真24枚】マイナーチェンジしたVWの最量販モデル、Tクロス 詳細画像はコチラ ◆マイナーチェンジでも価格は変わらず 今年2024年はVWゴルフの誕生50周年に当たる。ゴルフといえば我々昭和オヤジ世代にとっては憧れの輸入車であり、累計生産3700万台以上というVWの金看板ではあるが、近頃はちょっと勢いがないようだ。 思ったほどBEV(電気自動車)の売れ行きが伸びないにもかかわらず、電動化を推進しなければならないといった事情もあるだろうが、その大黒柱を時に上回るほどの売れ行きを見せているのがコンパクトSUVのTクロスだという。 そういえばメルセデスやBMWでもGLCやX3が基幹モデルであるCクラスや3シリーズを抜いて最量販モデルになったというニュースも聞いた。そういう時代なのである。 Tクロスは日本でも好調で、導入初年度の2020年(およそ8900台、翌2021年は9200台)から3年連続で輸入SUVセグメントでNo.1の座を獲得している。2023年は約6200台で2位だったが(とはいえ1位は身内の兄貴分たるTロックの6600台)、今回のマイナーチェンジで首位奪還を目論んでいるのは間違いない。 マイナーチェンジした新しいTクロスのラインナップはアクティブ(329.9万円)/スタイル(359.9万円)/Rライン(389.5万円)の3車種、試乗車はその中の最上級グレードに当たるRラインである。マイナーチェンジを受けても価格は事実上変わらず、Rラインについては装備を一部オプション化したとはいえ、約10万円引き下げられている。円安だからと、そのまま価格に転嫁しないところはさすが老舗インポーターの手腕である。 ◆しなやかで滑らか 全長4135×全幅1785mmのコンパクトなボディ・サイズも事実上変わらず。ただしエクステリアはバンパーやライト類を中心によりクールに手直しされている。 またダッシュボードにソフトパッドを採用し、これまでは素っ気なかった手触りや見た目にも配慮されている。 それに対して基本メカニズムには一切変更なし。116psと200Nmを生み出す3気筒1リッター直噴ターボにデュアルクラッチ式7段自動MTのDSGを組み合わせた全車FWDという成り立ちに変わりはない。 だが資料には一切言及がなかったにもかかわらず、乗ってみると明らかに違う。 従来型でも小さな3気筒エンジンとしては十分に静かと言えたが、それでもやはり負荷とスピードによっては特有の振動が感じられた。それが新型ではほとんど気にならなくなっていた。 詳細は結局この記事の締め切りまでに分からなかったが、エンジンマウントや遮音材などが改良されているのかもしれない。走りっぷりも不満はない。全開時にはちょっと頭打ち感はあるものの、小気味よくポンポンとシフトアップするDSG任せで走れば実用域では実に軽快俊敏である。 乗り心地も同様、従来型に比べてスッキリ洗練された印象だ。とくにこのRラインのように18インチ・タイヤを装着したモデルは、不整を乗り越えた後の振動やバタつき感などの粗さが気になったものだが、新型は何だかすっかりしなやかで滑らかだ。ボディ・カラーの新色やプレミアムサウンド・システムよりも、全体的に角が取れた清々しさが新型Tクロスの一番の収穫だ。 文=高平高輝 写真=望月浩彦 (ENGINE2024年12月号)
ENGINE編集部
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