第165回直木賞受賞会見(全文)佐藤究さん「限界までいろんなことを詰め込んだ」
立ち位置の変化にどう対処するのか
朝日新聞:朝日新聞の興野と申します。このたびはご受賞おめでとうございます。 佐藤:ありがとうございます。 朝日新聞:直木賞を取られて、これからたぶん世の中の佐藤さんを見る目っていうのが大きく変わってくると思うんですけれども、ご自身はどういうふうにお考えか分かりませんが、その立ち位置の変化に対してはどのようにやっていこうというふうに思われますか。 佐藤:そうですね、当然、興野さんおっしゃったように、立ち位置に変化っていうのはあるんでしょうけれども、これ以前にも幾つかの賞をいただいて、何か見える風景は変わりましたかとかよく聞かれるわけじゃないですか。よく考えてみたんですけど、われわれ小説家、僕はその業界の端っこのほうにいるだけなんですけど、読者の皆さんの人生を変えるとまで言ったら大げさですけど、ちょっとでも皆さんの生活のほうに変化をもたらすっていうのが仕事ですので、賞をもらってこっちの見方が変わっているようではちょっと手遅れっていうか、仕事になってないわけですよね。 だから僕自身はもう変わらないっていうか、変えないとしか言いようがないようですね。応対とかはもちろん丁寧にやりますけども、僕自身の人生がどう変わるかではなくて、僕らの仕事っていうのは読者の人の皆さんの、1日のちょっとした変化、それは1週間の変化でもいいんですけど、やるのが仕事ですので、それをやりなさいっていうことなのかなと、今日ここで座って受け取っていますけどね。 朝日新聞:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。ほか。すいません、はい、お願いいたします。
山本周五郎賞と直木賞のW受賞は2人目。どう思うか
産経新聞:おめでとうございます。産経新聞、海老沢と申します。 佐藤:ありがとうございます。 産経新聞:佐藤さんは以前、この小説を書くときには、賞を意識したらこれだけバイオレンスは書かないと、どんな賞にも引っ掛からないというようなことを編集者さんにもおっしゃってたっていうことなんですが、ふたを開けてみたら山本賞を受賞して、今回、直木賞とのダブル受賞っていうのは2人目っていう、非常に珍しいことになったんですが、このことについて何か今、率直に驚きとか、どんなふうに感じてらっしゃるのか教えていただければと思います。 佐藤:ちょっと作品世界の話になるんですけど、ほぼほぼ、主人公のコシモっていう少年が出てくるんですけど、本当ね、コシモ、おまえすげえなっていう、そういう感じですね。こういうところまでいくのかっていう。だからこれは別に僕という人品骨柄を批評して賞をいただいたとかまったく関係なく、作品についてですので、やっぱりこの中で出てきた人々とか事件がこういうところまできてしまったのかっていう驚きありますね。 おっしゃったように、本当にやっぱりハードなシーンっていうのはちょっと度を超しているところも当然あるわけで、それで、そういうので、作っている途中に担当編集者さんに、大きい賞には、もうこれはノミネートもされませんのですいませんと。ただ、この小説、こういうのが好きなんだっていう人には本当に気に入ってもらえる作品にはしますのでっていうふうには仕事は進めてきましたので、だからもうただただ、これはもう僕の力ではどうにもできないことですので、こういうふうなノミネートもそうですし。驚きですよね。 産経新聞:ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。じゃあ最後の質問とさせていただきます。じゃあニコニコ動画の【タカダ 00:42:45】さん。