『光る君へ』を彩る平安装束を今に伝える匠の技。十二単もすべて手縫いで!中宮彰子の“お産装束”やまひろの衣装を再現した婚礼衣装も登場
◆安産祈願のため女房装束も白一色に 山科流では、布地の色にかかわらず、白糸で縫うのが決まり。一寸三針なので、通常の和装の仕立てと比べると縫い目がかなり大きいのですが、このほうが装束の風合いが出るのだそうです。 婚礼用に使われることも多いため、向蝶丸紋(二匹の蝶が向かい合った姿を表す吉祥文様)や雲鶴丸紋(たなびく雲の中、つがいの鶴が向かい合って飛ぶさまを表す)など、文様や配色にもおめでたいものを選んでいるとのこと。 また、白の女房装束を現代的にアレンジした「平安調白無垢」も考案。格調高い婚礼衣装として提供しています。 というのも、平安時代の宮中では、出産が近づくと、吉日を選び、産室の室礼も女房たちの装束もすべて白一色に変えて安産を祈願したというのです。『紫式部日記』に、中宮・彰子のこうした出産準備が記されているほか、『源氏物語』の巻34「若菜・上」にも、明石の女御が東宮の皇子を出産する場面で、同じような描写が出てきます。 このことに着想を得て、真っ白な唐衣や裳に、金銀の鳳凰や大粒の真珠などをあしらった、きらびやかで品格のある十二単が生まれたのです。
◆まひろの袿姿を模した貸衣装も 『光る君へ』人気は、婚礼衣装の世界にも影響を与えているらしく、福岡のブライダル業者からは、『光る君へ』のポスターなどで吉高由里子さんが着用している袿をつくってほしいとの依頼が。そこで、写真などを参考に、同じような袿姿一式を制作。柄本佑さんが着た赤の武官束帯を模した男性用の装束もあわせて作成し、喜ばれたそうです。 金の鳳凰が華やかな袿と赤の束帯は、昨年5月に京都・平安神宮で行われた『光る君へ』の取材会で二人が着用していたもの。そのときの写真と福呂さんが制作したものを見比べても、素人目には違いがわからないほどそっくりに仕上がっています。(ドラマの衣装では淡いクリーム色だった地色は、依頼主の希望で薄紫にかえたそうです) 赤の束帯は、若き日の道長がドラマのなかで何度も着用していましたし、鳳凰柄の袿は、まひろが定子や一条天皇と対面したときに、女房装束の表着(うわぎ)としても着ていたように思います。 というわけで、これを着たカップルは、『光る君へ』の世界に飛び込んだような気持ちになるはず。結婚式のお色直しで平安装束を選ぶというのも、なかなか個性的で素敵だと思います。 もちろん、「雪月花苑」にも、正装の束帯、准正装の衣冠(いかん)、そして冠直衣など、本格派の男性用装束が揃っています。好みの色を選べる冠直衣が、とりわけ人気が高いとのこと。こうした装束に袖を通せば、光源氏、あるいは藤原道長になった気分が味わえるのではないでしょうか。
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