『光る君へ』を彩る平安装束を今に伝える匠の技。十二単もすべて手縫いで!中宮彰子の“お産装束”やまひろの衣装を再現した婚礼衣装も登場
NHK大河ドラマ『光る君へ』の舞台である平安時代の京都。そのゆかりの地をめぐるガイド本、『THE TALE OF GENJI AND KYOTO 日本語と英語で知る、めぐる紫式部の京都ガイド』(SUMIKO KAJIYAMA著、プレジデント社)の著者が、本には書ききれなかったエピソードや知られざる京都の魅力、『源氏物語』にまつわるあれこれを綴ります。 【写真】『光る君へ』まひろと道長の衣装を模した貸衣装 * * * * * * * ◆手縫いで仕立てる十二単 大河ドラマ『光る君へ』をきっかけに、平安装束に興味を持った人もいると思います。 ただ眺めるだけではなく、実物を手に取って、その感触を知りたい。できるなら自分も平安装束を身につけてみたい。そう思った人にご紹介したいのが「十二単記念撮影館 雪月花苑(平安装束体験所)」(京都市伏見区)です。着付けとメイク、カメラマンによる写真撮影がパッケージになったプランがあり、本格的な平安装束を着用することができます。 この施設を運営するのは、福呂一榮さん。装束の研究と制作に長年携わり、平安時代の文化や装束のすばらしさを現代に伝えることをライフワークにしておられます。 老舗装束店・平安装苑に嫁いだ福呂さんは、義母である先代から、装束の仕立てと着付けを徹底的に仕込まれたそうです。平安装束の継承に人生を注いだ先代の想いと技術を受け継ぎ、今では十二単の第一人者を自負するほどに。 主に婚礼用貸衣装の制作を手がける一方で、平安装束の魅力を気軽に体験してもらう場として「雪月花苑」を開設。家族やカップル、外国人観光客にも装束体験を提供しています。 「雪月花苑」に用意されているのは、伝統を守りつつ現代的な改良を加えたオリジナルの「一榮十二単」です。格式ある正絹の装束のほか、軽さと着やすさを重視したテトロンのシリーズも開発。「十二単は重くて、たいへん」という声に応える一方で、肝心の仕立てでは伝統を重視。山科流の装束仕立て技法で、福呂さんが、ひと針、ひと針、心を込めて手縫いで仕立てています。 「長い針と太めの絹糸を用いて、一寸(約3.8センチ)を三針で仕立てます。十二単一式を仕立てるのに2ヵ月ほどかかるでしょうか。お蚕さんに感謝しながら、また、おめしになる方が幸せになるようにと願いながら制作しております」(福呂さん)
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