血液型に関係する病気(3)A型が新型コロナに感染しやすいワケ
血液型と感染症で、いま最も注目を集めているのが新型コロナです。武漢で流行が確認された直後から、血液型との関係が調べられ、世界中で多数の研究論文が発表されています。それらを総合すると、「血液型がA型の人の感染リスクが最も高い」という結論になります。 インドから東南アジアにB型が多いのはコレラが原因だった A型の感染リスクは、論文によってバラつきがありますが、他の血液型と比べて1.2~1.5倍程度となっています。 新型コロナは、2002~03年に中国や香港を中心に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と、症状(原因ウイルスも)が大変よく似ています。SARSのとき、患者の血液型と感染リスクが調べられ、A型のリスクが高くO型のリスクが低いことが示唆されていました。そこで今回も調べてみたら「やはり」という結果になっていたのです。 A型の感染リスクが高い理由については、少し分かってきています。B型やO型の人が持っている、血液中の「抗A抗体」が関係しているらしいのです。 血液型は赤血球表面を覆う糖鎖の種類によって決まりますが、それとは別に糖鎖に対する抗体も、重要な役割を担っています。A型の血液には、B型糖鎖(B抗原)に対する抗体(抗B抗体)が溶けています。逆にB型は、A抗原に対する抗体(抗A抗体)を持っています。 またO型は、抗B抗体と抗A抗体の両方を持っています。これらの抗体の働きによって、輸血の可否が決まりますが、その話は別の機会にしましょう。 一方、新型コロナウイルスの表面には「Sタンパク質」と呼ばれるトゲ状のタンパク質が多数突き出ています。それが人体細胞の表面にあるACE2と呼ばれるタンパク質と結合することで、感染が成立します。 ところが抗A抗体が、Sタンパク質とACE2が結合するのをある程度妨害することが、実験によって確認されました。 つまりB型とO型の人は抗A抗体を持っているおかげで、新型コロナウイルスの感染からある程度守られているのです。 しかしA型では、新型コロナウイルスが自由にACE2と結合できてしまい、それだけ感染リスクが高くなるというわけです。 もちろんまだ仮説の段階ですし、別のメカニズムが働いている可能性もあります。今後の研究に期待しましょう。 (永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)