なぜ”ようやく”ヴィッセル神戸の大迫、イニエスタ、武藤の”オールスターズ”が爆発したのか?
近くに武藤がいるだけではない。ダイヤモンドの頂点に立つイニエスタが、左右のインサイドハーフの佐々木大樹と郷家友太が攻撃に絡み、アンカーのセルジ・サンペールが浦和につかまらない位置から長短のパスを的確に味方へ配球する。 システム変更が攻撃面でも奏功したのは前半8分だった。サンペールから左サイドバックの酒井高徳へパスが入る。このとき、ペナルティーエリアの左側に佐々木が、真ん中に大迫が、その背後には武藤が走り込んできていた。 浦和守備陣がマークを絞りきれない状況で、酒井はアーリークロスを選択する。浦和の両センターバック、岩波拓也とアレクサンダー・ショルツの間に生じたスペースを突いた大迫が、ショルツと駆け引きを演じながらシュート体勢に入った。 「あの場面では高徳が一番奥にいた僕を見てくれて、素晴らしいパスを出してくれた」 こう振り返った大迫は後方から転がってくるボールに、利き足とは逆の足をダイレクトで合わせる。高難易のプレーであり、実際、シュートは当たり損ねだった。それでもボールは浦和の守護神、西川周作の牙城を破り、泥臭くゴールへ吸い込まれていった。 神戸でのデビューから6試合目、時間にして444分もかかった初ゴール。鹿島アントラーズに所属していた、2013年11月30日のセレッソ大阪戦以来となるJ1通算41ゴール目を大迫は「長かった」と難産だったと振り返り、さらにこうつけ加えた。 「いまの状態をキープすれば、自然とついてくるものだと感じていたので。焦らずというか、いまできる最高の準備を常にしよう、ということだけを心がけてきました」 1トップの場合はポストプレーに加えて、相手を引きつけて味方が入り込むスペースを作り出す動きが求められた。実際、前節までの2試合で右サイドハーフの武藤が決めたゴールは、いずれもサイドに流れた大迫のアシストから生まれていた。 一転して2トップでは、自身もゴール前へ攻め込むシーンも増える。ストライカーの感覚を取り戻すだけでなく、新たな仲間たちとの連携も「徐々に合ってきている、という感覚もある」と手応えを深めた大迫の咆哮が神戸全体をも刺激した。 たとえばイニエスタ。試合後のオンライン取材で大迫の先制弾に感化され、士気が上がったのでは、と問われると「それはあると思う」と笑顔でうなずいた。 「彼は素晴らしいプレーヤーだし、代表選手でもあるクオリティーをチームへ存分に活かしてくれている。彼がボールを持てば失わないと僕たちはわかっているし、連携プレーもすごく上手い。今日は90分にわたってプレッシングをかけるなど、チームのために走り続けてくれた。その上でゴールを決められたのは、フォワードの彼にとってとても重要なこと。チーム全体として、今日は最高の試合をしたと思う」 刺激を受けたイニエスタは前半21分に、来日4年目でリーグ戦では初めてとなる直接フリーキックからゴールを決めた。浦和が作った壁の隙間を低空の弾道で突き、約20m先にいた西川を金縛りにさせた一撃をさかのぼっていくと、敵陣の高い位置で酒井がボールを奪い、攻撃に転じた矢先に武藤が倒されて獲得したファウルに行き着く。