主役は道長なのに話は宇多の帝から?倫子・明子の結婚の時系列が意図的に変えられている?赤染衛門が『栄花物語』に潜ませた<企み>を解明する
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマの放映をきっかけとして、平安時代にあらためて注目が集まっています。そこで今回は『女たちの平安後期』を著書に持つ日本史学者の榎村寛之さんに「『栄花物語』に隠された企み」について解説いただきました。 『光る君へ』「もう…衛門の好きにしてよいわ」タジタジの倫子。その勢いに秘められた<赤染衛門の真意>とは…視聴者「だから猫!」「地雷踏んだ」「倫子さまの顔(笑)」 * * * * * * * ◆赤染衛門の『栄花物語』とは 『光る君へ』では、藤原道長の正妻、源倫子(黒木華さん)が、自分や娘の太皇太后彰子に仕えていた女房の赤染衛門(凰稀かなめさん)に、「殿の物語」を書くように依頼する場面がありました。 しかし物語はなぜか道長が生まれるずっと前の宇多の天皇から始まっていて、倫子がとまどうも赤染衛門の迫力を前に諦める…というコミカルなシーンが話題に。 今回は赤染衛門が記していたその『栄花物語』のナゾに迫りたいと思います。 『栄花物語』は、正編三十巻と続編十巻に分かれていて、赤染衛門は、前半の作者の可能性が高いとされています。 とはいえ、本文には著者の手がかりはなく、赤染衛門の作だと指摘した記事は、鎌倉時代の文献に見られるものが最初だということです。 ひらがなで書かれた歴史書、というのが最大の特色ですが、内容には同時代の貴族の日記や簡単な歴史書の『日本紀略』、『大鏡』とも食い違う所がしばしばあり、わざと変えているのではないかともいわれています。また、彰子中宮が後一条天皇を出産する場面は『紫式部日記』と重なる部分が多いことが指摘されています。
◆誰のために書かれたのか? こうした特徴から、『栄花物語』は多くの女房が書いた色々な記録を編纂して創られた物語で、赤染衛門はいわば編集長のような役割だったとも推測されています。 とにかく正体がよくわからない本なのですが、あらためて読んでみると、大きな疑問が浮かび上がってきます。それはこの物語が「誰のために書かれたのか」ということ。 『栄花物語』の主人公は道長です。ですが、正編は道長の死まで書いているので、当然、道長はその完成を見ていません。そして忘れてはいけないのは「本来の歴史書や日記は漢文で書かれていた」ことです。 漢文は貴族女性の教養ではなく、紫式部や清少納言はむしろ例外だったのです。この事実から、『栄花物語』は、身分の高い女性が読むことも視野に入れて書かれていたと考えられます。
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