自責感や自己否定感が強くなる。子どものトラウマが大人より深刻になる重大な理由
友だちとトラブルばかり起こしている、大人に対して反抗的、拒食や過食……。こうした「困った子」は、実は本人が困っている子です。過酷な体験で生じた心の傷=「トラウマ」から、問題行動を起こしているのかもしれません。 【漫画】「悪魔の子の証だよ!」新興宗教にハマった母親が娘に言い放った信じ難い一言 わかりにくいのは、なにがあったかを子ども自ら話すことが少ないからです。トラウマは、先の人生に大きな影響を及ぼすことさえあります。ですから周囲は、子どもの回復のためになにができるかを考え、行動していくことが必要です。 そこでこの連載では、『子どものトラウマがよくわかる本』(白川美也子監修、講談社刊)を基にして、当事者はもちろん、子どもにかかわるすべての支援者にも知っておいてほしいことを、全8回にわたってお伝えします。 支援者が子どもや家族をコントロールするのではなく、双方が力を与え合い、この世に生きている幸せを共に感じられる。そんな瞬間を増やすのに役立つヒントをぜひ見つけてください。今回は、子どものトラウマの原因やその現れ方についてみていきましょう。 子どものトラウマがよくわかる 第3回 〈子どものトラウマは蓄積される。虐待された子どもが長く抱えるトラウマの記憶とは〉より続く
子どもは未発達だからこそトラウマの影響が大きくなりやすい
子どもは発達していく段階の途上にあるという点において、大人とは大きく違う存在です。おそろしい体験がトラウマになることは年齢を問わずありますが、年齢によってその出来事の受け止め方、言い換えると体験のしかたは異なり、影響の現れ方も変わってきます。 養育者の不適切なかかわりによる傷は、発達のしかたに大きな影響を及ぼします。養育者が適切にかかわっていても、養育者が気づかないところでトラウマを負った子どもは、トラウマ記憶がじゃまをして、養育者に心から甘えられないかもしれません。 また、幼少時に受けた性被害のように、大きくなってから行為の意味を理解し、体験の受け止め方が変わることで、トラウマの影響が出始めるといったことも起こりえます。 【未発達だからこそ影響は大きくなりやすい】 ●ものごとを否定的にとらえやすい 子どもにとっては、家庭の中が世界のすべてです。そこで起きたことをもとに世界観が形成されていきます。家庭の中で傷つけられる体験を重ねれば、家庭の外で出会う人も世界も、否定的にとらえがちになります。 ●トラウマ記憶の残り方が特殊 言語化がむずかしいため、五感や思考のすべてを含む詳細かつ膨大な記憶となるか、すっぽり抜け落ちてしまうかのどちらかになりがちです。トラウマ記憶には、時系列の誤りや事実の誤認がみられることがあります。出来事が起こる直前に目にしたこと、耳にしたことが「悪いことが起こる前兆」として刷り込まれることもあります。 ●自責感や自己否定感をもちやすい 自分が望まない事態が起きたとき、なにか、あるいはだれかの非を見つけるより、「自分が悪い」と考えるほうが子どもにとっては簡単です。自責感をいだいたり、「自分はどこかおかしい」と、自分を否定的にとらえたりしやすくなります。