自責感や自己否定感が強くなる。子どものトラウマが大人より深刻になる重大な理由
同じような体験でも、子どもによって傷の残り方は変わる
子どもが「つらい」と感じるような体験のすべてが、トラウマになるわけではありません。似たような体験をしていても、トラウマになる子・ならない子がいます。その差はどこにあるのでしょうか? 子どもの心をバネにたとえるなら、トラウマはバネがつぶれて弾性を失った状態といえます。力を加えられてひずんだバネが元に戻るか、それともひずみが残ったままになるかは、バネの材質や太さ、巻き方や、加わる力の大きさや回数によります。 また、バネのまわりに衝撃を吸収するものがあれば、同じ力でもバネにひずみを残しにくくなりますし、ひずんだバネを巻き直すことができれば弾力性が戻ります。これは一つの比喩にすぎませんが、トラウマの生じ方、残り方は、出来事そのものの内容だけでなく、さまざまな要因が関係しているのです。 【傷の残り方にかかわる要因】 ●子ども自身の素因 トラウマとなりうる出来事を体験した年齢が低い、発達障害がある、もともと不安障害などの素因をもって生まれているといった場合は、トラウマが残りやすいとされています。 ●トラウマ体験の重なり 以前にもトラウマとなるような出来事を体験していた場合には、新たな出来事によって再びトラウマが生じやすくなります。 ●環境 機能不全の家族はトラウマが残りやすくなる要因の一つ。特定の養育者との間に安定した絆ができている、困った問題をかかえる家庭に対する社会的なサポート体制が整っているなどといったことは、トラウマが残りにくくなる要因になります。 「回復にかかわる要因」にもさまざまなものがあります。それは、以下の9つです。 (1)社会文化的文脈 (2)歴史的文脈 (3)育てられ方 (4)社会的役割 (5)個人的特質と運 (6)心理社会的資源(資源とは、その人のもつお宝のようなもの。以下同) (7)遺伝体質的資源 (8)人生経験の質 (9)人生経験の一貫性 これらすべてが一体になってレジリエンス(トラウマや逆境による影響から回復していく力や、そのプロセス)を支える基盤をつくります。こうした要因により、大人や社会、共同体の役割の重要性がわかります。