自責感や自己否定感が強くなる。子どものトラウマが大人より深刻になる重大な理由
「困った行動」は、子どもが身を守るための反応や症状
子どもがトラウマになるような体験をしたとき、危険に対処する方法として、意識するより先に身体的な反応が生じます。そうした状況のなかで生きてきた子どもは、客観的にみれば危険とはいえない状況でも、あるいは危害を及ぼすおそれのない相手に対しても、しばしばトラウマを負ったときと同じように反応し、行動します。 そうした行動は「問題行動」とみられがちですが、トラウマをかかえる子どもにとっては、不安な状態から逃れ、なんとか安心したいがための対処法であり、自分を守るための行動であると考えられます。 【トラウマによる問題行動の現れ方】 ▼トラウマ体験を想起させる引き金がひかれる ↓ ▼ストレス反応 危険を感じたときに起こる身体反応を「3F(スリーエフ)」といいます。「闘争か逃走か反応」がうまくいかないとシャットダウンが起こり、フリーズが生じます。 子どもによって3F の現れ方は異なります。 ・ファイト(闘争)……危険な状況に立ち向かおうとする(闘争する、立ち向かう、攻撃的になる) ・フライト(逃走)……危険な状況から離れようとする(逃げる、ひきこもる、白昼夢にふける) ・フリーズ(凍りつき)……凍りついたように動けなくなってしまう(固まる、動けない、同じことをくり返す) ↓ ▼固定化した症状 重要な他者(養育者)とのアタッチメント関係でうまく調節・調整されないと、一時的な反応から変化しにくい症状へと固定化していきます。 ・外在化症状……より身体的な防御反応で、どちらかというと男児に多くみられます(攻撃的な行動、暴言・暴力など。衝動性・多動性・不注意が目立つ。いわゆる非行※、違法薬物の使用※など。※思春期以降)。 ・内在化症状……自分のトラウマに触れないよう、行動だけでなく考えることそのものを避け続ける「回避」という状態に。どちらかというと女児に多い傾向があります(不安、抑うつ、身体化、心身症状、PTSD。自傷、自殺企図。過量の飲酒※など。※思春期以降)。 ↓ ▼再演 外在化症状を現す子どもはやがて加害者へ。内在化症状を現す子どもは再び被害者へと、知らず知らずのうちに、トラウマを負ったときと同じような状況に身を置きやすくなります。 〈いわゆる多重人格、悪夢、赤ちゃん返り……子どものトラウマのさまざまな現れ方〉へ続く
白川 美也子(精神科医・臨床心理士)