日銀・黒田総裁会見9月17日(全文1)三本の矢は大きな成果もたらした
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の17日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀、大規模な金融緩和策を維持 黒田総裁が記者会見(2020年9月17日)」に対応しております。 【動画】日銀、大規模な金融緩和策を維持 黒田総裁が記者会見 ◇ ◇
現状維持とすることを賛成多数で決定
毎日新聞:それでは会見を始めます。幹事社から、9月幹事社の毎日新聞です。まず本日の金融政策決定会合の決定内容についてご説明をお願いいたします。 黒田:本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について、現状維持とすることを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利が0%程度で推移するよう、上限を設けず、必要な金額の長期国債の買い入れを行います。 また、長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITは当面、年間約12兆円、年間約1800億円に相当する保有残高の増加ペースを上限に、積極的な買い入れを行います。CP等、社債等については、2021年3月末までの間、合わせて約20兆円の残高を上限として買い入れを行います。
消費者物価の前年比は0%程度
次に経済・物価動向について説明します。わが国の景気の現状については、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開する下で持ち直しつつあると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は大きく落ち込んだ状態から持ち直しつつあります。そうした下で、輸出や鉱工業生産は持ち直しに転じています。一方、企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は減少傾向にあります。雇用・所得環境を見ると、感染症の影響が続く中で、弱い動きが見られています。 個人消費は飲食、宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっていますが、全体として徐々に持ち直しています。住宅投資は緩やかに減少しています。この間、公共投資は緩やかな増加を続けています。金融環境については、全体として緩和した状態にありますが、企業の資金繰りに厳しさが見られるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっています。 先行きのわが国経済は、経済活動が再開していく下で、ベントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調をたどるとみられます。もっとも、世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が残る中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。その後、世界的に感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していく下で、わが国経済はさらに改善を続けると予想されます。 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の原油価格下落の影響などにより、0%程度となっています。予想物価上昇率は弱含んでいます。先行きについては、消費者物価の前年比は当面感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられます。その後、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響が剥落していくことから、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。 リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、極めて不確実性が大きいと考えています。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持される下で、金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要です。