ブラウン大学のママ教授が明かす「共働きが子どもの学力に影響を与える」説の真偽
学校外の過ごし方が、子どもの肥満度を決める
興味深い結果ではあるが、母親の就労との"因果関係"については証明されていないことに注意しよう。もし母親が家にいたら、子どもが同じことをしたかどうかは、私たちにはわからない。 このテーマに関する論文では、母親が子どもをスポーツに連れて行ったり、愛情を込めて家庭料理を準備したりする時間が減ったことから、関連性が生じていると推測されていることが多い(7)。 そうかもしれないが、実際に親の時間の使い方を見ると、働いている親が働いていない親に比べて、こういった活動に費やす時間が短いことは明らかではない(8)。そのため、働くことではなく、単純に各家族のそれ以外の違いが重要である可能性も依然として考えられるのだ。
つまり...何を意味するのか?
データには欠陥があることを考慮して、このエビデンスに決定的な因果関係がないことをはっきりさせておこう。相関関係が示唆されるも、2つの結果だけにすぎず、関心のある事柄のすべてを網羅しているわけではないのだ。 明らかなのは、子どもの学校外での過ごし方が多少は重要であるということだ。高収入の世帯のほうが、母親の就労が子どもにマイナスな影響を与えるらしいという結果は、そういった世帯では子どもが親と一緒にいるときに「豊かな」活動ができる可能性が高い、という解釈もできる。 だから「親が共働きをするべきではない」という意味ではなく、学校外の時間の過ごし方や食事の選択などは、しっかりと考えるべきことだと論じているのだ。要するに「慎重に考慮する」ことが大切なのだ。 たとえ私たちが、こういった影響のすべてを因果関係だと捉えたとしても、その影響は"非常に小さい"ことは確かだ。学業成績にはほとんど影響がなく、統計を厳密に調べたとしても、影響はごくわずかだ。肥満についてはやや大きいが、それでも子どもの体重に関わる他の要因とは比べものにならない。 [注釈] (1) Goldberg, Wendy A., et al. “Maternal Employment and Children’sAchievement in Context: A Meta-analysis of Four Decades of Research.” Psychological Bulletin 134, no. 1 (2008): 77. (2) これは R0 (コロナウイルスの流行中によく耳にしたかもしれない)。相関関係を表す小さな r にすぎない。 (3) Ruhm, Christopher J. “Maternal Employment and Adolescent Development.” Labour Economics 15, no. 5 (2008): 958–83. (4) Morrissey, Taryn W., Rachel E. Dunifon, and Ariel Kalil. “Maternal Employment, Work Schedules, and Children’s Body Mass Index.” Child Development 82, no. 1 (2011): 66–81; Ruhm. “Maternal Employment and Adolescent Development.” 958–83. (5) Ruhm. “Maternal Employment and Adolescent Development.” 958–83. (6) Datar, Ashlesha, Nancy Nicosia, and Victoria Shier. “Maternal Work and Children’s Diet, Activity, and Obesity.” Social Science & Medicine 107 (2014):196–204. (7) Morrissey, Dunifon, and Kalil. “Maternal Employment, Work Schedules, and Children’s Body Mass Index.” 66–81. (8) Hsin, Amy, and Christina Felfe. “When Does Time Matter? Maternal Employment, Children’s Time with Parents, and Child Development.” Demography 51, no. 5 (2014): 1867–94.
エミリー・オスター(ブラウン大学経済学者)