世界で1100万部突破!空前の大ヒット書籍『嫌われる勇気』が人の心をつかんだワケ
アドラー心理学の本がなぜ『嫌われる勇気』なのか
世の中で常識や定説と思われている物事に対して、本当は違うのではないかという仮説や推論を立ててみる。これは「逆説モデル」と言われます。これに近い切り口で「人を動かす」「隠れたホンネ」であり、より多くの人を動かせる「インサイト」に結びついたと考えられる例の一つが、あの大ヒット書籍のタイトルにあります。 【写真】慶応の“美白王子”愛用で「ニベア」バカ売れ! それでも花王の業績は曇り空? 「人を動かすアイデア」を誰でも生むことができる「インサイト思考」に迫った『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。 ◇ ◇ ◇ 大ヒット書籍である『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)をご存じの方も多いと思います。アドラー心理学に基づく幸せな生き方をわかりやすく説いた本です。 この本のタイトルである『嫌われる勇気』も、「逆説モデル」の思考プロセスと同じようなアプローチでインサイトを見つけて、名付けられているとも考えられます。アドラー心理学を紹介する書籍タイトルを普通に考えれば『アドラー心理学入門』や『これであなたも幸せに生きられる「アドラー心理学」』などといったタイトルになることが容易に想像できます。 しかし、この本では安易にそのようにせずに、 ○現代の世の中の人がどのような「常識」を持っているのか? ○その人たちのどのような「気づき」を捉えて、アドラー心理学のメリットを説明すれば、最も「腑に落ちる」のか? という思考プロセスを経ていると想像できます。
「承認欲求」を追い求めすぎている人たちへ向けた言葉
それは、アドラー心理学の理論的支柱の一つである「承認欲求」に関する「常識」です。『嫌われる勇気』が出版されたのは2013年ですが、ちょうどSNSという新しいメディアが世の中で一般化されはじめ、多くの人々が今までよりも「承認欲求」ということを意識し、メディアでも指摘され始めた頃です。 そして、おそらくこの本の著者たちが気づいたのは、「承認欲求」を追い求めるあまり、「人に認めてほしいがために、嫌われることを気にしすぎている傾向が、近年特に強くなっているのではないか?」という「気づき」だったのかもしれません。つまり、次のように考えて『嫌われる勇気』というタイトルを考えたのではないかと想像できます。 ◼️心の奥底で思っている「インサイト」を突く みんな/世の中は、 「幸せに生きるためには、誰からも『嫌われない』ことが大切だ」 と思っているかもしれないが、 実は/本当は、 「幸せに生きるために、嫌われることを恐れず自分の意見を伝える勇気を持ちたい」 と自分は思う。 「人に好かれることにこだわりすぎると、人の期待に応えようとして他人に振り回されることが増え、人間関係のストレスや悩みを抱えやすい。アドラー心理学の考え方を学んで、『嫌われる勇気』を持てれば、他人の言動に左右されることなく、自分の人生を自分らしく歩むことができる」という、アドラー心理学の要点を「逆説的」に伝える意図があったのかもしれません。アドラー心理学と言っても興味を持たない人を振り向かせるために、みんなが心の奥底で思っている「インサイト」を、非常にうまく突いています。