「梅がそもそも知られてなかった…」 梅酒のチョーヤ、ずっと赤字だった海外事業で、「創業家が自ら営業」を続けた結果
1959年に製造・販売がはじめた当初は、周囲から、「田舎のワイン屋が何を」「不可能だ」と馬鹿にされたそうだが、金銅一族は文字通り梅酒を背負って海外へ売り歩いてきた。当初は、各国の空港の免税店に並べ、知名度を高める戦術から。「日系人だけでなく、地元の人に飲んでもらうプロモーションをしよう」が合言葉だった。 プロモーション先は、憧れだったヨーロッパやアメリカ。しかし、欧米ではワインやブランデー、スコッチなどを伝統的に飲み続ける気風があり、そもそも梅という果実がない。説明は容易ではなかった。
「輸入先によっては、日本の国税局と保健所、大阪商工会議所に出向き、『日本で伝統的に食べられている果物を使ったお酒です』と書いた書類にサインをもらったこともあります」と金銅氏は苦笑する。そして、そこまでしてもヨーロッパでの売り上げボリュームは大きく伸びなかった。 一方で、アジアの国々でプロモーションをはじめると、ここ数十年の間に経済発展を遂げたこともあり、じわじわとシェアが伸びていった。これらの国々では、梅という果実や漢字になじみがあったからだ。なかでも、台湾、香港、タイ、シンガポールで好まれ、現在の輸出先の中心となっている。
この海外への地道な営業活動は現在も続いており、金銅氏の兄で現社長の金銅重弘氏は、今でも海外で梅酒をセールスしているという。 ■国内ニーズは2極化。どちらにも応える商品展開を 一方、国内市場はどうなっているのだろうか。チョーヤの2023年12月期の決算での総売上高は139億円を上げているが、それを支える梅酒へのニーズは今、大きく2極化しているという。濃厚な熟成梅酒を求める層と、アルコール感の薄い梅酒を好む層だ。
特に20~30代の若年層では、「お酒は飲みたいけど、酔いたくはない」「もうアルコールを飲まなくていい」という人も増え、この潮流が従来の14%から10%にアルコール度数を落とした『さらりとした梅酒』や、ノンアルコールの『酔わないウメッシュ』などのヒットを生んだ。 他方で、昨今のウィスキーブームを受けて、度数が高く味わい深い酒を好む中年層も増えている。そのため売り上げは、もともと同社が展開していた、度数が高く濃厚に熟成した味わいを楽しむ『The CHOYA』と『さらりとした梅酒』が2本柱に。そこに加えてノンアルコールの『酔わないウメッシュ』が入り、今は3本柱という状況だ。