「梅がそもそも知られてなかった…」 梅酒のチョーヤ、ずっと赤字だった海外事業で、「創業家が自ら営業」を続けた結果
「ワインであればビンテージという考え方がありますよね。『どこの地域の何年もの』など、プレミアを付けて売られています。残念ながら梅酒はそうはできませんが、天然ものだからこそ味のぶれは避けてはいけない、酸味料や香料、着色料に逃げてはいけない課題だと思っています」(金銅氏) ちなみに創業から今まで、まれに「味が違う」などの指摘を受けることもあったが、チョーヤ梅酒の特徴を説明し、納得してもらっているそうだ。
■利益をよりもミッションと夢を追求 梅酒は1700年頃、江戸時代に生まれた飲み物で、当時の食について記された本草書『本朝食鑑』にもレシピが残っている。当時は日本酒の古酒を使用していたが、時代と共に蒸留酒に変わり、数百年の時を越え愛されてきた。 「弊社のミッションは梅酒の文化を世界に発信し、後世に伝えることです」。金銅氏が取材中、何度も言った言葉だ。そして最後も、「利益をよりもミッションと夢を追求する。その気持ちを残しながら、梅酒をつくり続けていきたい」と締めくくった。
チョーヤ梅酒の在り方はすぐに真似できるものではない。そして、決してスマートではなく、泥臭い。だが、これも日本ならではの企業文化として、後世に受け継いでいくべきものではないだろうか。
笹間 聖子 :フリーライター・編集者