単なる「資金調達」の手段ではない…事業承継×企業成長を叶える可能性を秘めた“IPO(新規株式公開)”という選択肢【経営コンサルタントが解説】
大西靖彦氏(株式会社タナベコンサルティング)は、事業承継の方法の1つである「IPO(新規株式公開)」は単なる資金調達の手段ではなく、企業の未来を大きく変える可能性のある選択肢だといいます。本記事では、大西氏が「IPO」が持つ可能性について解説します。
”事業承継”が企業の未来を大きく変える
事業承継という言葉を耳にするたびに、私たちはその背後にある複雑な感情と挑戦を思い浮かべる。 家族経営の企業が次の世代にバトンを渡す瞬間、それは単なる経営の移行ではなく、企業の魂を次の世代に託す重要な儀式となる。特に中小企業においては、創業者や現経営者が引退する際に、次世代へのスムーズなバトンタッチが求められる。 事業承継の方法には、親族内承継、従業員承継、M&A(合併・買収)など多くの選択肢があるが、今回はIPO(Initial Public Offering、新規株式公開)について解説する。
事業承継の手段としての“IPO(新規株式公開)”
事業承継の手段が多くあるなかで、IPO(新規株式公開)という選択肢が検討されることがある。IPOは単なる資金調達の手段としてだけではなく、企業の未来を大きく変える可能性を秘めた選択肢である。 IPOを選択する意義を理解するためには、まずその背景にある企業の成長と変革の物語を紐解く必要がある。多くの企業は創業者の情熱と努力によって築かれ、その後、家族や近しい仲間たちによって支えられて成長する。 しかし、時代が進むにつれて、企業は経営環境の変化と新たな挑戦に直面する。市場の変化、技術の進化、そしてグローバルな競争環境のなかで、企業は成長と持続可能性を追求し続けなければならない。 IPOは事業承継または企業が新たなステージに進むための1つの手段である。株式市場に上場することで、企業は大規模な資金調達を実現し、成長戦略を加速させることができる。 IPOで得た資金を新たな事業展開や技術開発、さらにはグローバル市場への進出などに投資することで、次の世代が持続可能な成長を実現するための原動力を得ることができる。 また、IPOは企業の透明性と信頼性を高める重要なステップでもある。株式市場に上場するためには厳格な情報開示とガバナンスの強化が求められるが、これによって、企業は外部の投資家やステークホルダーからの信頼を獲得しやすくなる。 透明性の向上は企業のブランド価値を高め、顧客やパートナーとの関係を強化することにもつながる。 IPOによる見直しと改善→持続可能な成長 さらに、IPOは企業の文化と組織の変革を促進する力を持っている。上場企業としての責任と期待に応えるためには、企業は内部のプロセスやガバナンスを見直し、改善する必要があるためだ。IPOをきっかけに、企業はより効率的で効果的な経営を実現し、持続可能な成長を追求することができるのである。 事業承継における選択肢としてIPOを実現できれば、次世代への大きな贈り物となる。つまり、IPOは創業者や現経営者が築き上げた企業の価値を最大化し、次の世代に引き継ぐための重要なステップとして捉えることができる。 IPOを通じて得られる資金と信頼性は、次の世代が新たな挑戦に立ち向かい、企業をさらに成長させるための強力な武器となるだろう。 しかし、IPOを選択することは簡単な決断ではない。上場には多くの準備と努力が必要である。具体的には、企業は内部のプロセスを見直し、情報開示の体制を整え、外部の専門家と協力して上場準備を進める必要がある。 また、上場後も継続的なガバナンスと情報開示が求められる。これらの努力は企業の成長と持続可能性を追求するための重要なステップであり、次の世代に対する責任でもある。