阪神”矢野采配”裏目で巨人にマジック「38」点灯…巨人と阪神の違いは「監督力」「執着心」「守備力」の3点にあり
巨人、楽天、西武などでヘッド、戦略、作戦コーチを務めたことのある野球評論家で新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ強化アドバイザー兼総合コーチの橋上秀樹氏は、「巨人の野球が一枚上であることを表すようなシーンだったのでは」と指摘した。 「梅野を2番に起用している理由は、その打力でしょう。2点差で7回。ならばどっしりと構えて“打て”だったと思います。糸原、サンズ、大山と続く打順でビッグイニングに変える可能性もあるイニングです。初球にバントの構えをさせたのはバスターエンドランを仕掛ける前の常套の動きですが、バスターエンドランは裏をかく作戦ですから、これを出すのは巨人ベンチがバントを想定し、“バントOK。やらせよう”と、スッとストライクを取りにくることが考えられる場合です。だが、巨人ベンチは梅野が、すんなりとバントをやってこないことを読んでいたのでしょう。だから厳しいゾーンへのスライダーを選択したのだと思います。大城のミットは変化球想定の場所で構えていました。巨人と阪神の先を読む力の違い。この積み重ねが10.5差につながる原因のひとつかもしれません」 加えて高梨はストライクが入らずに苦しんでいた。梅野のバットを信頼すべきであったが、矢野監督の焦りが、勝負の流れを巨人に引き渡すことになる。 矢野監督は、初回無死一塁からも、梅野に簡単にバントをさせていた。糸原のタイムリーにつなげたが、立ち上がりに不安のあった菅野は、自らの調子を鑑みて、大量失点を恐れていた。勝負するなら7回ではなく、この初回だった。すべてが裏目である。 そして巨人と阪神の違いを象徴するシーンが9回にあった。阪神は巨人の“守護神“のデラロサを一死一、二塁と攻めたが、“ラッキーボーイ“の近本のセンターへ抜けていくかと思われた打球を二塁の吉川尚が飛びついてスーパーキャッチ。転倒しながらも、すぐさま二塁へ正確なトスを送り、2点差にし同点の走者が出塁することを食い止められたのだ。 巨人のスーパープレーは初回にも。先制点を奪いなお一死一塁からサンズのセンターへ抜けていく打球を遊撃の坂本が止め、バックトスから6ー4ー3のダブルプレーを成立させていた。 一方の阪神は守りで見えないミスをやらかしていた。8回二死一、二塁から大城を迎えた場面でライトを少し前に出したくらいでセンター、レフトを定位置に下げ前進守備を敷いていなかったのだ。二塁走者は増田大。1点をあきらめ大量失点になることを警戒したのだろうか。結果、大城が叩きつけた打球は、センター前へ抜けた。近本は三塁へ送球して一塁走者を刺したが、あまりに重たい終盤の1点を巨人に渡すことになったのである。