1ドル153円超えの米ドル円…12月に入り、急ピッチの円安が進むワケ【国際金融アナリストが解説】
FOMC後も米金利は“あまり上がらない”可能性
過去2年、「歴史的インフレ」の影響で米金利は年末にかけ低下 では改めて、米金利は今週のFOMCを受けて上がるのか、それとも下がるのか。 2023年は、年末にかけて米金利が低下しました。2022年は12月後半から米金利が反発に転じましたが、これは「日銀サプライズ」で日本の金利が急騰したことに連れた面が大きかったようと考えられます(図表4参照)。 なぜ過去2年、米金利は年末にかけて低下しやすかったのでしょうか? それは2022年以降の「歴史的インフレ」の結果、金利上昇リスクへの警戒から債券の“売られ過ぎ”が続き、買い戻しが入りやすかったことが一因とみられます(図表5参照)。 こうした見方が正しければ、FOMCなどの注目イベントを経ても、米国債売りに伴う米金利上昇や日米金利差の米ドル優位・円劣位の拡大は限られる可能性があります。もしそうであれば、米ドル高・円安もおのずと限られることになると考えます。
今週は「FOMC」と「日銀会合」に注目
今週は、18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして19日は日銀の金融政策決定会合と、日米の金融政策を決める会合が続く予定となっています。 このうち、FOMCでは、3回連続で「利下げ」との予想が有力視されています。ただしここに来て、今回の利下げの有無以上に、2025年以降の利下げ見通しが徐々に後退している点に意識が強くなっている印象があります。 その意味では、今回公表される予定の「ドット・チャート」、FOMCメンバーの経済見通しのなかで、2025年以降の金融政策の見通しは大いに注目されることになりそうです。 日銀の金融政策については、最近にかけて見方が大きく揺れるところとなりました。一時は、今回の12月会合で追加利上げとの見方が有力視されましたが、先週から12月利上げはなし、さらに年明け以降も3月頃まで利上げを見送る可能性ありといった具合に、早期利上げ見通しが大きく後退しています。 先述したように、日銀の金融政策に対する為替市場の反応は大きい状況が続いているため、今回の日銀の決定、そして今後の金融政策の見通しに対しても、米ドル/円が大きく反応する可能性があるため要注意です。 ところで、基本的に年内の為替相場は、「最後のビッグ・イベント」である12月FOMCへの反応で一巡するのが基本です。 ただ、2022年のケースのように、年内最後の日米の金融政策が“サプライズ”となったことで、年末にかけて「もうひと相場」展開するケースもあります。その意味では、今週の日米金融政策会合の結果を受けて、年内の「もうひと相場」の有無が決まるといった目線も必要かもしれません。 以上を踏まえ、今週の米ドル/円は、日米の金融政策をにらみながら日米金利差の米ドル優位・円劣位拡大に伴う米ドル高・円安を試すものの、その限界を確認する展開を想定します。そのうえで予想レンジは、151円~155円で想定します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒