柳宗悦も認めた「鳥越のすず竹細工」が120年に1度の危機 最後の担い手・柴田恵の伝統をつなぐ想いとは
120年に一度の枯死に見舞われるスズタケ
材料のスズタケを採る作業については、父から学んだという。 「スズタケが採れる場所や山によって質が違うことなど、山のことは父が教えてくれました。昔は近所のおばあちゃんが『しの(=スズタケの方言)切らせてもらわえぃ』と断りを入れてうちの山で採っていた。“お互い様”の精神でだれも自分の山から竹を持っていっても文句を言わない時代。私も山の持ち主がわからない山へ採りに行くときは必ず作ったかごを持っていき、持ち主が現れたらお礼にそのかごをあげていました。近頃はかごの代わりにビール券も持っていくようにしています(笑)。時代が変わり、勝手に入ると問題が出てくることもあるし、スズメバチやクマの危険もあるので、最近は知り合いの場所で、みんなで日時を合わせて採らせてもらうことも多くなりました」 スズタケは直径1センチにも満たない細さで、ササの仲間に分類される。それを4つ割りにして肉を削(そ)ぎ、薄くしなやかな状態にしたひごを使う。ほかの竹と比べて細いため、本数も必要だ。編み込む作業にフォーカスされがちだが、じつは材料を調達し加工しそろえるまでも大変な作業だ。 そのスズタケが2018年頃から鳥越全域で枯れてきている。記録によると直近が1897(明治30)年、その前が1781~89年(江戸時代の天明期)と、ほぼ120年周期で枯れているが、そのメカニズムはわかっていない。専門家によると再生するまでに20年かかるという。 「今は気候も変わっているし、本当に20年で復活するかどうかはわかりません。でも、そんなことばかり考えて作るのをやめてしまえば、そこで終わってしまう。少し硬めでもできる竹があれば竹を変えて、何とかスズタケが復活するまでつないでいきたいと考えています。最近は作る量を抑え、この先1~2年分の材料は何とか確保している状況ではありますが、その先はわからない。とにかく今やれることをやっていきたいです」