漢方のプロ、樫出恒代さんが40代・50代読者のお悩み、ダイエット・更年期の汗…にアンサー【OurAgeの大人相談室/大人のシャベリ場まとめ】
お悩み③
耳の後ろ側など、昔は汗をかかなかったような場所に汗をかくようになりました。歳をとるごとに体の変化が少しずつ出てきていますが、汗をかく場所も、年齢によって変わることがあるのでしょうか?(42歳・会社員)
樫出さんの回答 年令によって、汗をかく場所は変わります!
◆40代以降、プレ更年期に入ると、熱が上に上がりやすくなります 思春期の頃は、主に下肢(足)に多く汗をかいていたのが、次第に体幹や全面に移り、上肢(腕)にかくようになり、40代以降になると頭部周辺にかくよう変わっていくのです。つまり、汗をかく場所は歳をとるほど、上に上にと上がっていく、ということです。 特に、頭部にかく汗はとても必要なもの。理由は、脳の温度のコントロールにもつながっているためです。脳の温度が上がりすぎることは危険ですから。のぼせや頭痛、更には機能障害を起こしてしまうからです。生命を維持するためにも汗をかいて脳の温度を下げ、一定に保つ必要があるのです。 額に汗をかく人は多いですよね。それも脳に近い重要な場所だから、というわけです。お悩みにある耳の後ろ、また首の後ろなども頭部に近いので、年齢を重ねて、そういった場所に汗をかくことが増えるのは大いに考えられるでしょう。 年齢によって汗をかく場所は変わる。その大前提のもと、OurAge世代に多い次の3つの原因についても、一緒に探っていきましょう。
汗をかく3つの原因
【その①「冷え」はありませんか?】 ご相談者さんの42歳という年齢を考えると、そろそろプレ更年期に入る頃。だんだん熱が上のほうに上がりやすくなると同時に、今度は下半身が冷えやすくなっていきます。 漢方的に言うと、それは「腎」の力が落ちている状態。腎は、とくに「腰から下のエネルギー」と考えます。高齢になると足腰が弱くなるのも、その下半身の力が落ちてくるから。 年齢とともに「腎」の力が落ちる、すなわち、生命エネルギーが低下してくると考えます。生命エネルギーが低下することで、「氣血水」のめぐりが悪くなり、冷えやすくなります。 また、腎のちからが低下すると腰痛・足・むくみ・子宮の病氣など特に下半身の不調が出やすくなり、下半身の冷えにつながります。腎は水のコントロールもするところなので、うまく水をコントロールできなくなり汗というかたちで、耳の周りや頭部に汗をかきやすくなります。 一方、熱は上に上がりやすくなります。耳の後ろという、頭部のまわりに汗が出ている可能性もあります。 その場合、汗を止めたいからと体を冷やすのは逆効果ですが、一時的に自律神経の通る首のうしろを冷やすのは、熱さと汗をとめることに役立ちます。 お腹や腰など、下半身を温めるようにしましょう。ゆっくりとお風呂に浸かり、リラックスしながら身体を温める。足首を回したり、足裏やふくらはぎのマッサージをして血行を促進させる。ウォーキングすると、上に上がった熱が下がり、汗も自然に止まってくるようになります。 【その②「臭い」はありませんか?】 薄いサラサラの汗の場合は該当しませんが、汗がドロドロして臭いが気になる…という場合、漢方では、血の巡りが滞る「瘀血」になっていると考えます。 瘀血の症状がある人はのぼせて汗をかきやすく、血がドロドロになっているのです。西洋医学的には、年齢とともにパルミトレイン酸という皮脂に含まれる脂肪酸が増えて酸化し、加齢臭の元となる、ノネナールという成分に変化すると言われています。 改善策としては、血を作る元となる食生活を改善すること。揚げ物などの動物性タンパク質や甘いもの、刺激物やカフェインの摂りすぎを避けて、大豆や黒豆、生姜、ネギなどを積極的に摂るよう心がけてください。また、運動不足にも気をつけましょう。 【その③「ストレス」はありませんか?】 氣持ちがウツウツとするとか、怒りが湧いてイライラするとか、あるいは心配事があってよく眠れない…ということはないでしょうか。 プレ更年期や更年期前後は、女性ホルモンが減ることにより、自律神経が乱れがちになります。 漢方では、自律神経の乱れは氣の巡りが滞る「氣滞」(熱がこもる)と捉え、氣のコントロールがうまく出来ていない状態と考えます。ストレスが原因で気が安定しない時、氣は上に上がりやすく、頭部の周囲(ご相談者さんの場合は耳の後ろ)に汗をかきやすくなっている状態かもしれません。 氣滞の症状があると呼吸も浅くなりがちなので、深呼吸を行う、アロマを取り入れるなどもおすすめです。 食養生としては、ミントや生姜、ミョウガ、シソなど、香りのあるものを取り入れるだけでも、氣の流れは良くなっていきます。
【教えてくれたのは】
樫出恒代さん 漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。漢方カウンセリングルームKaon代表。Kaon漢方アカデミー代表。新潟薬科大学薬学部卒業後、一人ひとりのこころとからだにていねいに向き合う漢方カウンセリングを提唱。OurAgeでの連載「女性のための漢方救急箱」の味わいあるイラストは、本人によるもの。美容家・吉川千明氏との共著に「内側からキレイを引き出す 美肌漢方塾」(小学館) 取材・原文/上田恵子(お悩み①)、井尾淳子(お悩み②③) イラスト/樫出恒代