「海洋熱波」が「最も暑い夏」をもたらしたと気象庁など分析 今夏も危険な高温続くと予測
北日本が昨年「過去最も暑い夏」になったのは、三陸沖などの海面の温度が記録的に高くなる「海洋熱波」が影響した可能性が高い、とする分析結果を気象庁や東京大学などの研究グループが発表した。海面水温の極端な高温により、低い位置の雲の形成が妨げられて日射が増したほか、水蒸気が増えるという複数の気象要因が重なって危険な高温をもたらしているという。 研究グループによると、日本近海の温度は世界平均より地球温暖化に伴う上昇率が高い。海面水温が高い状態は今も続いており、気象庁は今夏も危険な暑さが続くと予測している。海面水温は簡単には下がらないとみられ、日本の異常な暑さは夏の恒例になると心配される。
海面水温は100年間で平均1.28度上昇
海洋熱波は過去の記録と比較して、その時期としては異常に高く、極端な高温が数日から数カ月持続する現象。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新の第6次評価報告書で地球温暖化に伴う海洋熱波の頻度や強度が増大すると分析されていた。
気象庁によると、日本周辺の海面水温を過去100年の推移で見ると平均1.28度上昇している。特に近年は日本近海の暖かい海域が広がったために台風の強度が強くなっているとの指摘もあった。
研究グループは、気象庁の「異常気象分析検討会」会長を務める東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授のほか、同庁気象研究所、北海道大学、海洋研究開発機構の研究者らで構成した。
昨年の夏の日本の平均気温は1898年の統計開始以降で最も高くなった。北日本は1946年の統計開始以降で最も暑い夏となり、特に太平洋側で異常な高温になっている。
気象庁の検討会は、北日本の高温の原因を議論した昨年8月に開かれた会合で、周辺海域での海面水温の異常な高温状態が影響した可能性を指摘した。しかし、高温をもたらした詳しい過程は明らかにしていなかった。今回、中村教授らは改めて北日本近海の持続的な海洋熱波が大気の高温状態に与える影響について詳しく調査、分析した。