「海洋熱波」が「最も暑い夏」をもたらしたと気象庁など分析 今夏も危険な高温続くと予測
気象要因が複雑に絡んで異常高温に
中村教授らは今回、 過去の海面水温の平年差や気温の平年差などのさまざまなデータを用いて改めて詳しく調査、分析した。
その結果、昨年は高度約3000メートル以下の低い大気の気温が過去と比べて際立って高く、特に地表付近で平年差が最大となっていたことから、昨年夏の異常高温は、上空の大気循環の変動のほか大気と接する海洋側の要因も関係があることが判明。海面水温は黒潮の流れが北上して冷たい親潮が後退し、三陸沖から北海道沖にかけて海洋熱波が発生したことが分かった。
さらに、この海洋熱波により海面付近の大気が不安定になり、北日本の夏に見られる大気下層の雲(下層雲)の量が場所によって20%程度減少した。このために地表に届く日射量が増えて海面水温がさらに上昇。大気を加熱したほか海面から水蒸気量も増えて熱がこもる温室効果が高まったという。
昨夏の北日本を中心とした異常な暑さは、こうした気象要因が複雑に絡んでいたことが明らかになった。中村教授ら研究グループは「地球温暖化の進行に伴って異常高温のリスクが高まっている。近海の海洋熱波が地上の異常高温に与える影響について理解を深め、その予測精度を高めることは気候変動対策の観点から重要だ」と強調している。
一連の研究は科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム」などの支援を受けて行い、論文は7月19日の英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。
10月まで酷暑続く見込み
気象庁や異常気象分析検討会会長の中村教授によると、今夏も海洋熱波は最強レベルで続いている。暑さのピークは7月下旬から8月上旬と予想されているが、同庁が7月23日に発表した10月までの3カ月予報では、「ラニーニャ現象」が発生する可能性が高いことなどから、9、10月も高温が続いて厳しい残暑になる見込みだ。 同庁の分析結果による予測では、ラニーニャ現象の影響で海面水温は西部太平洋熱帯域で高く、中・東部太平洋赤道域で低い。インド洋熱帯域では東部を中心に高い。このため、東南アジア付近を中心に積乱雲の発生が多くなる。これらの影響で太平洋高気圧が日本の南東で強く、偏西風は日本付近では平年より北寄りを流れる。このために日本付近は暖かい空気に覆われやすいという。