「夜の街」を支えるワンオペ薬剤師――深夜営業の薬局から見た、「震源地」歌舞伎町の景色【#コロナとどう暮らす】
日本屈指の繁華街である新宿・歌舞伎町。この街に、「夜の店」の関係者を常連客とする調剤薬局がある。薬局を一人で切り盛りする中沢宏昭さん(42)は、緊急事態宣言中も変わらず店を開けていた。新型コロナウイルス感染拡大の「震源地」として名指しもされた街のど真ん中で、中沢さんは何を感じたのか。深夜営業の薬局の人間模様を追った。(Yahoo!ニュース 特集編集部/撮影:殿村誠士)
「そのまま死んでいたかもしれない」
「意識が戻ったとき、医者がホチキスでバチンバチンと頭を縫っていました」 6月22日、ちょうど日付の変わる深夜0時ごろ。薬剤師の中沢宏昭さん(42)は突然倒れた。自ら店主を務める調剤薬局のなかで意識を失ったのだ。過労だった。 「薬局の奥で倒れていたら、そのまま死んでいたかもしれない。運が良かったです」 定休日で客はいなかった。血だまりの中に横たわる中沢さんを通行人が店のガラス越しに発見、九死に一生を得た。防犯カメラには、意識を失い壁に頭をぶつけて倒れる中沢さんの様子が映っていた。
中沢さんが営むニュクス薬局は、日本屈指の繁華街として知られる東京・新宿歌舞伎町のど真ん中にある。深夜営業の調剤薬局で、市販薬も販売する。場所柄、二日酔い防止の漢方薬や鎮痛剤、デリケートゾーンの塗り薬、精力剤、滋養強壮剤などの需要が多いという。ローションや海綿もそろえている。 7年前の開業以来、中沢さんは調剤から接客まですべて一人でこなしてきた。夜8時の開店から翌朝9時の閉店時間まで働き詰めの毎日。そんな「ワンオペ」ぶりがたたり、ついに過労で倒れてしまったのだ。それでも、倒れた翌々日にはもう店頭に立った。 「けがは頭に縫った痕とコブがあるくらいで何ともありませんでした。いつも来てくれる患者さんもいますし、店を休むことは考えもしなかった。でも、もうちょっと発見が遅かったら死んでいたと言われたんで、このままでいいのかとかいろいろ考えはしました。それに、患者さんに心配されたんじゃだめですよね」