「夜の街」を支えるワンオペ薬剤師――深夜営業の薬局から見た、「震源地」歌舞伎町の景色【#コロナとどう暮らす】
感染拡大の第2波が注目されるただなかの8月下旬、中沢さんはこの日も夜8時に薬局を開けた。やってきたのは、隣の西新宿で居酒屋を経営している男性だった。 「今日は歌舞伎町、人多いですね。金曜日だし、感染者が減少傾向とかニュースで言ってたからですかね」 男性は持病の薬をもらうため月に1度、薬局を訪れる。 「(緊急事態)宣言中にここで無利子の借入金の話を教えてもらって、すぐに役所に行きました。あのときは売り上げ8割減までいったかな」 東京都からは営業時間の短縮を要請されている。客足は戻ったのか。 「厳しいですね。第1波のときよりはマシですけど、今は常連さんでどうにかなっている状態。サラリーマンの人たちは1割くらいしか戻ってない。ほんまに歩いてないですからね。今も時短営業やから、もう店閉めなあかんけど……正直ね、常連客が来るのがこんくらいの時間からなんですよ。閉めるに閉められない。言葉悪いけど、闇営(業)になりますよね」
男性と入れ替わるように、金髪の華奢な女性が姿を現した。この6月まで、アパレル会社の正社員をしながら、夜は歌舞伎町のバーで副業をしていたという彼女。しかし、歌舞伎町が「感染源」として名指しで批判されたことで、昼の仕事を辞めざるを得なかったと話す。 「夜に歌舞伎町で働いているっていうので、昼の会社にメールでクレームが届いたらしいです。正社員で9年働いたんですけど、クビ。歌舞伎町、歌舞伎町っていろいろ言われて辞めることになった。もともと好きで歌舞伎町で飲み歩いてたし、もう面倒くさいからいいやって。働いているバーは感染対策もしてました。ちゃんとしてない店もあると思うけど、他の街も同じだと思うんですよ。歌舞伎町が悪いみたいに言うけど、たまたまここで感染が見つかったってだけじゃないですか」 中沢さんは、歌舞伎町だけを責めても意味がないと考えている。 「歌舞伎町で営業するなと言ったって、結局は別の場所に流れるだけ。川崎とか、都外の繁華街に流れた子も多いと聞きました。そこも今は飽和状態みたいですが。一番心配なのはキャバクラの子。いつも顔を見せていた子も、ぱったり来なくなりました。キャバクラに来るのって、大企業の役員とか、社長さんとか。会社に勤めている人が多いので、キャバクラ経由で感染したってことになるとまずい。そうなると客のほうから引いていくし、(情報共有などの)協力をお願いしても嫌がっちゃうみたいですね」