世界中が熱視線!発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが考えるこれからの“発酵文化”
クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。今回は発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがゲストです。 ◇ ◇ ◇
「発酵」は1つのカテゴリーになった
小竹:ヒラクさんが“発酵デザイナー”と名乗り始めた2014年から10年が経ちましたが、ここ数年の発酵ブームをどのように見ていますか? 小倉さん(以下、敬称略):日本でいうと、もうブームではなくて1つのカテゴリーになった感じがします。例えば、「今ファッションって流行っていますか?」って聞きますか? 小竹:聞かないです。 小倉:ファッションは流行るとかではなくカテゴリーですよね。発酵も同じ感じになったと感じます。でも、「こういう形のレギンスって流行っていますか?」みたいなことは言いますよね。 小竹:言いますね。 小倉:そういう感じで、「今は玉ねぎ麹が流行っています」とかは言いますね。 小竹:発酵の中でもトレンドみたいなものはあるという感じ? 小倉:そうそう。発酵は素材とかトピックスだと考えていたと思いますが、実はカテゴリーであるということが社会に定着したと感じます。 小竹:そうですね。 小倉:ここ数十年間は産業化によって発酵の世界が僕らの日常生活からちょっと離れちゃった部分がありますが、もともとはすごく身近なものなんです。 小竹:そうですよね。 小倉:特に手作りをしている人たちにとっては、醤油、味噌、酒とかは当たり前の世界で、発酵が好きとか嫌いという話ではなかった。「電気が好きですか?」なんて聞かないじゃないですか。 小竹:聞かないですね(笑)。 小倉:でも、発酵が身近なところから離れていったり、和食がフェードアウトしていったりする流れの中で、僕とかいろいろな醸造家の人たちが出てきて。 小竹:若い方がたくさん出てきましたよね。 小倉:そうです。それで、発酵の世界は面白そうという感じになり、発酵という文化がもう一度定着したのが今だと思います。発酵がまたフェードアウトする世界を僕たちはもう想像できないと思いますね。 小竹:もともとあったものですが、ヒラクさんの活動を通じて、価値の再定義ができた感じですよね。 小倉:そう言ってもらえると本当にうれしいです。文化が再生していくときは、必ず素敵じゃないといけないと思うんです。世の中のためになるからとか、環境にいいからとか、健康にいいからだけでは絶対に裾野は広がらないし、定着しないと思っていて。 小竹:うんうん。 小倉:なんかよくわからないけど素敵とか、そこに関わっている人たちがキラキラしていて仲間に入りたいみたいなことが一番大事だと思っているんです。 小竹:そういうものをデザインされてきましたしね。 小倉:そういうことができたらいいなと思って、友人の醸造家とやってきました。もともと持っていた日本人にとっての発酵の世界が、最初はファッション性を持ってブームとなり、現代の食生活やライフスタイルにフィットして、1つのカテゴリーとして定着したのが今だと思います。