老後の家をどうする? DV離婚したシングルマザー、トリプルワークで娘を2人育て上げ。扶養家族がいなくなり「税金が増えた!」
◆平均睡眠時間は4~5時間 大家が言った「法人」契約とは、須磨子さんの実家の会社です。掛け持ちの3つの仕事のうちの一つで、実家の会社の会社員になっています。「モノづくり」の小さな工場で、須磨子さんは組み立て作業を担当。販路は主に国内ですが、製品は特殊なパーツなので、海外からも引き合いが来ます。先代社長だった父が他界した後、姉が経営を引き継ぎ、経理担当の母と、製造その他全般担当の須磨子さんの3人で回しています。 須磨子さんは、いまも平均睡眠時間は4~5時間。平日は工場に毎日出勤します。朝、自宅を5時45分に出て6時過ぎの電車に乗って都内の工場へ。7時の始業から働きます。お昼は手作り弁当を持参。午後3時まで働いて、慌てて帰宅します。3時半を回ると、その後が間に合わなくなるので大変です。 いったん帰宅して夕飯の支度をしてから、近くに借りている部屋へ。こんどは近所の子どもたちに教える個人塾の仕事です。1対1の完全個別指導ですが、最大で12人を教えていた時期もあります。いまの生徒は小中学生計4人。理科と国語は知人に頼んでいますが、残りは全教科、須磨子さんが担当。学習指導要領や教科書が変わるたび、最新情報に更新する必要があり、個別指導なので、けっこうな時間が準備に取られます。 「でも、出来なかった子どもが、こんなに出来るようになった、って見るのが楽しいの。教えるのは好き。私、先生に向いてたんだって、あとで分かった」
◆フリーランスには実感しにくかった所得税減税 もともと、須磨子さんは翻訳家でした。大学を卒業後、海外留学を経て、フリーランスの翻訳家としてキャリアをスタート。1990年代は仕事も多く、充実していました。ですが、景気の後退とともに仕事量が漸減。結婚、出産で家事や育児に手がかかるようになったこともあり、なかば引退したようなかっこうに。最近では、若手が増えて単価も下がりました。依頼があれば請け負いますが、翻訳の仕事は少なく、いまの主な稼ぎは工場と個人塾です。工場は会社員、塾と翻訳はフリーなので個人事業主。双方で税金を納めています。 「あの、政府の減税ってどこ行っちゃったの?」と、須磨子さんは不思議がります。この6月、政府は4万円の所得税減税を実施しました。国民に減税を実感させるように、企業に、6月の給与明細で「所得税0円」を明記するように指示した、と報道されていました。 「でも、ぜーんぜん」と須磨子さん。実家の工場は小さな会社ですし、個人事業主やフリーランスにはそもそも源泉徴収や給与明細がありません。モトザワや須磨子さんのようなフリーランスには、現金給付ではない「減税」は実感しにくかったです。 しかも須磨子さん、今年の確定申告で衝撃を受けました。下の娘も就職して家を出たため、扶養家族がいなくなり、「税金がすっごい増えた!」のです。子育て中のシングルマザーは、「扶養控除」「寡婦控除」の二つで計100万円近い控除が受けられます。子どもが独立した須磨子さんは、普通の「おひとりさま」になったため、控除が丸々、なくなったのです。 「びっくり! 慌ててiDeCoを始めたわ」。iDeCoの掛金は全額、所得控除の対象になるので、所得税と住民税、両方で節税効果があるからです。
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