経理・決算業務を自動化 「米主要500社の半数」が採用したSaaSとは?
女性のキャリアを伸ばすために必要なのは?
ただタッカー氏は、起業には非常に大きなリスクも感じたと振り返る。 「自己資金で起業したので、最初は怖かったですよ。大企業は支払いが遅く、代金を回収するまでに数カ月かかります。そうなると、所帯の小さな私どもの会社では、従業員に給料が払えなくなってしまいます。この大変さは身に染みました。本当にストレスフルで、おすすめしません(笑)」 「それでも起業をしようと思ったのは、アメリカンドリームを実現したかったからです。私が考えているアメリカンドリームとは、成功するビジネスを興して、何もなかったところから何百人、何千人の雇用を生み出すことです。それが究極の成功だと考えました。苦労なくして成長なし、というのが私の信条です。意思は固い方だと思います」 ブラックラインの従業員は現在1800人。管理職の約半分は女性が占める。女性の管理職比率が低い日本企業に対するアドバイスを求めると、次のような言葉が返ってきた。 「日本人の男性は、家事をもっと分担していただけませんか。女性が子育て、家事、料理から掃除まで、全部背負ったままで会社でも昇進するのはとても難しいことです。家事をもっと分担してほしいとお願いしたいですね。また、女性はつい遠慮して言いたいことが言えない場面や、控えてしまう場面があると思います。そんなときに、そっと後ろ盾になってくれて、悩みを共有してくれるような指導ができる上司が身近にいれば、女性も自信を持つことができて、良い仕事ができるようになります」 「米国ではより多くの女性が役員についている会社ほど、業績がいいという調査結果もあります。一緒になって考えながら育てていくことが、女性のキャリアを伸ばしていくためには大事ではないでしょうか」
AIと人間との信頼関係をつくることが大事
「The Business Report」の編集者と記者が選出に携わり、米ロサンゼルス地域のリーダーたちの功績を称賛する「The Top of 25 Business Leaders of Los Angeles For 2023」において、タッカー氏は第4位に選ばれた。同氏はエンジニアの経験がある経営者として、AIも含めた今後の展望を次のように見ている。 「私はテクノロジー分野では長い経験を有しています。その中で感じているのは、テクノロジーには流行(はや)り廃(すた)りがあることです。ブロックチェーンも、RPAもそうでした。一方、AIは本当にビジネスの流れを変える意味で、テクノロジーの波の一つになると信じています」 ただ「AIが非常に早く進化を遂げているのに対して、人間がまだ追い付けていない状況」だとも指摘した。 「期待がある反面、恐れてもいます。監査会社はAIに疑問を持っているようで、監査の際に『どの数字もAIが起こしたものではない』と誓うことを求められました。私たちはAIの進化によってどれだけ業務に対して効果を発揮するのかを、顧客が理解するお手伝いをしたいと考えています。AIが人間に代わってできることを知ってもらって、親しんでもらう。この信頼を作ることが大事です。私は経営者であると同時にエンジニアです。プロダクトに今でも愛着を感じていて、プロダクトが私の神髄です。ビジネスの課題をソフトウェアで解決できる妙味を、今後も追求していきたいですね」 (ジャーナリスト 田中圭太郎)
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