躍進続くサツマイモ:海外でも人気で看板商品に
「ほくほく」「ねっとり」個性豊かな品種で、海外からも引き合い
消費者ニーズを捉えた品種の育成や改良も進む。農水省によると現在、国内で最も多く生産されている品種は、ねっとり系の「べにはるか」で全国に普及。ほくほく系の「ベニアズマ」は関東地方を中心に、「ほくほく」と「ねっとり」のバランスがいい「高系14号」が関西や南九州を中心に栽培されている。「高系(こうけい)14号」から派生した「五郎島金時(ごろうじまきんとき)」(石川)や「なると金時」(徳島)、「宮崎紅(みやざきべに)」(宮崎)「紅さつま」(鹿児島)などは地域のブランドになっている。 ブームに火を付けた「安納いも」は鹿児島・種子島が発祥で戦後、インドネシアから持ち込まれたサツマイモを栽培したのが始まりとされる。ニーズの高まりを受けた本格販売に向けて選抜し1998年に、皮が褐紅色の「安納紅」と薄い黄褐色の「安納こがね」を品種登録、2022年3月には国が地域ブランドとして保護する「地理的表示(GI)」に「種子島安納いも」として登録されたという。 こうした追い風を受けて、生産量を急激に増やしているのが北海道だ。2023年産の作付面積は100ヘクタールとなり、この10年間で7.1倍、収穫量も1870トンで同じく6.7倍に急増した。温暖化による気温上昇で道内でも栽培可能になったことから、行政もサツマイモを新たな戦略作物となる「新顔作物」として選定するなど、生産拡大に力を入れる。 日本産のサツマイモは、海外からも注目を集める。財務省の貿易統計を基に農水省がまとめた資料によると、23年の輸出額は29億円となり、10年前の9.4倍に拡大。野菜の中ではイチゴ、ナガイモに次いで3位につけるなど、勢いを増している。主な輸出先は香港、タイ、シンガポール。このトップ3が輸出額の9割近くを占め、中でもタイへの輸出が著しく伸びていることから、国内産地はアジア市場を中心に、輸出増加が見込める有望品目として注目している。