【ロシアが仕掛ける不法移民を使った「ハイブリッド戦争」】欧州で移民懐疑論が高まる実態
2024年10月14日付のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、「12日、ポーランドの中道派トゥスク首相(前EU大統領)が移民の庇護申請権を停止すると公表した。今や、ヨーロッパにおいて移民問題は、反政府右派だけが提起する問題ではなく、多くの国で最重要政治課題になっている」旨述べている。 移民問題は欧州で最も厄介な政治問題だが、もはや極右だけの問題ではない。今週末、ポーランドの中道派トゥスク首相は、欧州の門を閉ざそうとする最も新しい指導者となった。 トゥスク首相は、ポーランドが新たに国境を越えてくる移民からの亡命申請の受け付けをまもなく止めると発表した。毎月数千人の移民が、中東やアフリカからポーランドへの入国を試みている。その多くは経済移民である。 しかし、一旦ポーランドに入国すれば、母国にいると必要な労働ビザ取得プロセスを回避して、代わりに亡命申請をすることができる。審査は長く費用のかかるプロセスで、その間、納税者の負担で欧州に滞在することができる。 トゥスク首相が特に懸念しているのは、ベラルーシがロシアに隷属し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国を不安定化させるために移民の流入を促していることだ。ベラルーシのルカシェンコ政権は、おそらく密入国組織と共謀して、移民をポーランド国境まで積極的に誘導している。フィンランドも今年、ロシアとの国境を越えるこのような「武器化された移民」を取り締まった。 これは、ロシアのNATOに対する嫌がらせを阻止する面もあるが、より重要なのは、国民が欧州の庇護法を支持しなくなっていることだ。今や、庇護法は迫害から逃れるためではなく、経済移民が通常の規則を回避するルートになりつつある。
これを指摘するのは、かつては反政府右派だったが、中道派の政治家たちも、有権者が移民問題に真剣になっていることに気付いた。ベルリンは先月、「非正規移民を制限する」ため、ドイツと他のEU諸国との国境で検問を再開した。フランス、オーストリア、イタリア、スウェーデン等も同様の措置をとっている。特に問題になっているのは、移民が亡命申請を有利なEU諸国内で行おうと申請先を選ぼうとすることだ。 トゥスク氏は昨年の選挙で右派政党「法と正義党」を退け、EUの喝采を浴びた中道派の政治家だ。欧州委員会は「国際的義務とEUの義務」を引用しつつ、彼の発表を批判したが、トゥスク氏はポーランドの有権者に応えているのだ。 ポーランドの有権者、そして近隣諸国の人々は我慢の限界に達している。トゥスク氏のようなEUのエリート政治クラブのメンバーでさえ、このことを理解し始めている。 * * *