Nstockが30億円調達、2025年に非上場株式の流通事業を開始へ
スタートアップ企業などの非上場株式を自由に売り買いするセカンダリー(流通)市場をめぐる動きが活発化している。株式報酬SaaS事業を手がけるNstockは9月9日、総額30億円の資金調達を実施したと発表。既存サービスの機能拡充に加え、非上場株式の売り手と買い手をつなぐプラットフォームを構築し、2025年に事業としてスタートさせる方針だ。 Nstockは、人事労務SaaSを提供するSmartHRの100%子会社として2022年に創業。SO(ストックオプション)の契約締結や権利保有者(従業員など)の管理を効率化するSaaSの展開と並行して、セカンダリー事業のニーズ検証を行ってきた。今回、WiL、CoralCapital、千葉道場ファンド、ALL STAR SAAS FUND、East Venturesを引受先とする増資を実施。調達した資金は主にプロダクト開発と金融商品取引法関連の業登録に充てる。 国内では24年5月に改正金融商品取引法が成立し、非上場株式の流通規制が緩和された。今後は、取引所を介さずに株売買を行うことができる「私設取引システム(PTS)」の開設に必要な認可要件も緩和される見通しで、新規プレイヤーが参入しやすい土壌が形成されつつある。 株主総会の運営支援を手がけるスマートラウンドも参入を明らかにしており、9月4日には、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、野村ホールディングスとの資本提携を発表。セカンダリー事業での協業に向けた議論を開始している。 日本のスタートアップ・エコシステムは、これまでプライマリー(発行)市場に偏重しており、非上場株式を直接買い取る特化型ファンドはいくつか存在するものの、自由に売り買いができるセカンダリー市場は実質的に存在していなかった。起業家やSOの権利保有者、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家には、「上場しなければ換金できない」という意識が働き、スモールIPOが生まれやすい要因のひとつになっている。 一方、海外では過去10年間で右肩上がりに伸びている。22年の世界の非上場株式セカンダリー市場規模(年間取引量)は1080億ドル(金融庁調べ)と巨大で、米国ではForge Global、NASDAQ Private Market、CartaXなど、複数の大手取引プラットフォームが存在。非上場の状態でスタートアップ企業が大きく成長していくための下地が整備されている。 Nstockでは、発行隊であるスタートアップ企業側が、取引参加者や取引条件を選択できる「社内取引所」をコンセプトにプラットフォームを構築していく方針。同社代表取締役の宮田昇始は、「日本からユニコーン、デカコーン企業を輩出していくうえで、(セカンダリー市場がないことは)ボトルネックのひとつになっている。スタートアップ・エコシステムをよりよくしていく民間側の旗振り役として土台づくりをしていきたい」と話した。
Forbes JAPAN 編集部