AIにとってGPUはなぜ欠かせない存在になったのか 長谷佳明
手始めの14年に、CUDA(Compute Unified Device Architecture)の汎用的な演算機能の上に、AI向け専用ライブラリー(特定の機能や操作を実行するためのコードの集合体)「cuDNN(CUDA Deep Neural Network)」をリリース、16年にはAI用コンピューター「NVIDIA DGX-1」を発表した。17年には、本丸であるチップそのものにもAIのための機能が組み込まれた。それが、AIの演算をハードウエアレベルでアクセラレーション(高速処理)する「Tensorコア」である。足掛け10年に及ぶAIへの重点的投資は、23年から始まる生成AIブームの後押しもあってさらに加速、エヌビディアを世界的な企業へと押し上げた。 振り返れば、グラフィック処理に特化したチップとして始まったGPUの歩みは、研究者のニーズに応えるべく汎用計算のGPGPUとして用途を拡大。そして、AIに求められる演算との相性の良さも大きな後押しとなり、ついには、自身の回路をAI向けに変えるまでになった。エヌビディアは、世の中のニーズをとらえ、数年おきに、まるで別物のようにGPUのアーキテクチャーを変更している。 この変更が可能なのも、既存のシステムとの互換性を自社開発するソフトウエアが担保しているからである。このハードとソフトの両輪が、GPUをAIにとってなくてはならない存在に押し上げ、今日のAI時代を切り開いてきたといえるだろう。 (長谷佳明氏・野村総合研究所エキスパートストラテジスト)