AIにとってGPUはなぜ欠かせない存在になったのか 長谷佳明
◇大量のデータ処理が可能に この状況が変わったのが2006年ごろである。エヌビディアが、汎用的な命令を簡単に記述できるよう自社チップ向けの専用のライブラリー(特定の機能や操作を実行するためのコードの集合体)を開発。それを「CUDA 1.0(Compute Unified Device Architecture)」と名付けリリースした。この結果、GPUはグラフィック処理以外の用途に用いるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units、汎用GPU)となり、一気に身近なものとなった。 2006年、東京工業大学(現東京科学大学)の松岡聡教授は、GPGPUを活用したスーパーコンピューター「TSUBAME1.0」を稼働。TSUBAMEは、その後もアップデートを重ね、性能もさることながら、対性能比の観点で、電力のエネルギー効率が非常に高い点が評価されている。特に数値計算においては、同じことを大量のCPUで処理するよりも、GPUの方が、消費電力は少なくて済む。現在はGPUは大量の電力を消費するものとの印象があるが、これをCPUで代替すれば、さらに多くの電力が必要になる。 エヌビディアはこのころ、大量の計算が必要となるスーパーコンピューターを有望分野と捉え、CUDAをバージョンアップするとともに、GPUにも科学技術演算に必要とされるデータ型を加えるなど、投資を継続した。その結果、エヌビディアのGPUは米国を代表するスーパーコンピューターにも採用されるようになり、GPGPU普及の一翼をになった。 ◇数年おきにGPUのアーキテクチャーを変更 エヌビディアは、2014年ごろから、折からの「第3次AIブーム」に乗り、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units、汎用GPU)によって切り開いたスーパーコンピューターの技術を発展させ、AIに特化した機能を継続的に開発した。